わかりやすい漢方講座(その4)~「七情」とは
前回は、病気の原因としての環境因子(外因)を「六淫」と呼び、「風・寒・暑・湿・燥・火」の六つがあるという事を書きましたが、今回は病気の原因のうちで残る「内因」と「不内外因」についてです。
まず、「内因」とは、簡単に言うと精神的なストレスの事です。一般的には、なんでもかんでも「ストレス」の一言ですまされますが、漢方では「七情」と言って、七種類のストレスを挙げています。即ち、「喜・怒・憂・思・悲・驚・恐」の七つです。
要するに、精神的ストレスと言っても、七種類もあって、それぞれのストレスによって影響を受けやすい臓腑も、用いられるべき漢方処方も、カウンセリング方法も違うということになります。詳しくは、
・ストレスについて(その1)
・ストレスについて(その2)・・・「怒」
・ストレスについて(その3)・・・「思」
・ストレスについて(その4)・・・「悲」「憂」
・ストレスについて(その5)・・・「驚」「恐」
・ストレスについて(その6)・・・「喜」
を参照して下さい。
実際問題として、一番多く見られるのは「怒」というストレスで、これはもともと「奴」の「心」すなわち、奴隷の心を表した字で、「自分の思い通りにならない」という感情を表しています。会社で言えば中間管理職などに多く見られます。また、次によく見られるのは、「思」というストレスで、これは「今さらどうしようもないことを、いつまでもあれやこれや考える」という感情を表します。
この「怒」と「思」という精神的ストレスは、直接的又は間接的に胃腸の機能を低下させますので、俗に「ストレスは胃にくる」という言い方がされるようになったと思いますが、正確に言えば、漢方では「怒」→「肝」→「脾」(胃腸)、「思」→「脾」(胃腸)というルートをたどります。
いずれにせよ、結果的に胃腸機能の低下を引き起こすわけですが、「脾は後天の本」ともいわれており、「脾」の機能(=胃腸の機能)こそ人間が生きていく上でもっとも大事であると考えられていますので、これらのストレスは病気の発生原因として無視できないものです。
また、番外編として「安逸過度」というものも致病因子の一つに挙げられていて、あんまりストレスが無さ過ぎるのも、「気」が巡らなくなって、病気の原因となるとされています。
最後に、前回の「外因」(=環境因子)と今回の「内因」(=精神的ストレス)以外に、漢方では致病因子として「不内外因」と呼ばれるものもあります。
「不内外因」としては
・飲食の不摂生
・過労や休養のしすぎ(運動不足)
・房事過多
・外傷などが挙げられています。
なかでも現代社会に於いては、圧倒的に飲食の問題が大きいと思います。