わかりやすい漢方講座(42)~出産年齢について
現代日本は世界有数の長寿社会で、女性が初めて出産する年齢もどんどん「高齢化」しているようです。実際、一昔前まで高齢出産といえば30歳以上でしたが現在では35歳以上を高齢出産と呼ぶようにもなりました。
ところで、漢方の考え方では女性は7の倍数で身体が変化するとされ、例えば14歳で初潮をむかえ、21歳から28歳にかけて体力が最も充実し、生殖能力もピークを迎えるとされています。その後、35歳からお肌や髪の毛が衰え始め、42歳からは老化が始まり49歳で閉経が近くなるとされています。
特に出産に関しては、約2000年前に書かれた黄帝内経には、
「生の来るはこれを精という」
「両神あい搏(う)ち、合して形をなす、常に身に先じて生ずるは、これを精という」
という言葉があり、人間の生命の本質は「精」という物質であるとしています。
現在でも「有精卵」や「精子」「精力」という言葉が使われますが、漢方では「精」という物質こそが自らの体を構成する物質的な基礎で、なおかつ人間の熱エネルギーの源泉であると考えられており、また、男女の「精」が合わさることで新たな「精」、すなわち生命が誕生すると考えられています。
よって、元気な赤ちゃんを出産するためには体の中に十分な「精」という物質がたくわえられていなければなりませんが、女性で言えば28歳を境にしてこの「精」は減少していきます。もちろん、人によっては40歳になっても十分な「精」を保持している方もおられますが、いずれにせよ「精」が十分になければ妊娠?出産という事は難しくなります(言葉を換えれば「老化」とは「精」が減少していく過程でもあります)。
この「精」という物質は先天的に両親から受け継いだものと、後天的に飲食物から得られる栄養物質が変化したものからなりますが、飲食物や飲食物を「血」や「精」に変換する胃腸の機能の差により個人個人の「精」の量は違ってきます。ただし、女性の場合は「精」というものの不足は生理や基礎体温に反映されますので、男性よりも判断がしやすくなります。
一例を挙げると、「精」が不足している女性は、まず生理の周期が40日程度と長めであったり、「精」は人体の熱エネルギーの源泉でもあるので、「精」の不足は冷え症、低体温、基礎体温表では高温期が短くなったりします。
漢方では、実年齢よりも生理の状況や基礎体温表などを参考にして不妊症には対処していきますが、根本的にはいかに「精」を増やすかというのが重要で、時間的なゆとりがあれば胃腸の機能を整えて飲食物から補給される「精」の増加を助けるという処方が使われますが、30歳以上のケースでは日一日と「精」は減少していきますので、こういう場合はより速やかに「精」を補充する働きのある漢方薬が必要になってきます。ただし、そういったものはどれも高貴薬と呼ばれるもので、価格は高くなります(「精」を補う作用が強いと言うことは、言葉を換えれば老化予防効果が強いと言うことになりますので、需要と供給の関係から必然的に高価格になります)。
閉経しない限り、いつでも出産することは可能だとお考えの方が増えている気がしますが、自然の摂理から言っても20代、遅くとも30代前半までが無理のないところだと思います。