わかりやすい漢方講座(その24)~漢方薬と病名
西洋医学の世界では、患者さんの病名を決定するところから治療が始まります。このため、様々な検査を経て病名が決まると、治療方針というか使用される医薬品もおのずと決まってきます。また、薬の方から見ても薬効欄には基本的に病名などが書かれています。
漢方薬といえども医薬品ですので、適応症が定められています。ところが、そもそも西洋医学とは全く違った医学体系である漢方医学では、本来、病名だけでは処方は決定されません。病名よりも、患者さんの体質や証(しょう)と呼ばれる、漢方的に見た病態を把握し、その病態に応じて処方が決定されます。
このため、西洋医学的には同じ病名でも、漢方的には全く違った証(病態)であることも珍しくなく(というより、殆どの場合に於いて、西洋医学的な病名は参考程度にしかなりません)、用いられる処方も違ってきます。更に、風邪のような疾患では、同じ人が同じような風邪を引いたからといって、風邪のどの段階かによっても用いられるべき処方は違います。
また、反対に西洋医学的な病名が全然違っていても漢方的に見た場合、同じ処方が用いられる事もあり(異病同治といいます)、はっきり言って漢方薬に書かれている適応症とか病名だけを元に漢方薬を選ぶのは、日本の法律では許されても、漢方的には無茶な話しです。
昔から漢方を勉強するのは簡単ではないと言われますが、理由は漢方薬の薬としての知識だけではダメで、患者さんの病態を漢方的に把握することが、ちょっとやそっとでは出来ないと言うところにあります。(因みに、約2000年前に書かれた、漢方のバイブルとも言える黄帝内経(こうていだいけい)には、漢方は学問ではなく「道」であると書かれています。)