「陰」と「陽」

わかりやすい漢方講座(その10)~「陰」と「陽」

 「未病とは」でもふれましたが、漢方では「陰」と「陽」の調和がとれていることを最も重視します。

 世の中のすべては「陰」と「陽」に分けられますが、具体的に漢方医学に於いて「陰」と「陽」とは、
・「陰」は「物質」で、「血」「津液」「精」
・「陽」は「機能」で、「気」
となります。

 また、五臓(肝・心・脾・肺・腎)における陰陽のバランスの失調に関しても、陰虚(陽に対して相対的に陰が不足している状態、主に物質面の不足が問題)や陽虚(陰に対して相対的に陽が不足している状態、主に機能低下症)などのように陰と陽のどちらに問題があるのかによって、用いられる処方も変わってきます。

 さて、漢方ではこの陰陽のバランスがとれている状態が健康な状態であると考えますが、言葉を換えれば、陰陽のバランスがとれているときに、「自己治癒力が最大限発揮される」ということです。

 反対に言えば、病気になると言うことは、環境の影響(外因)やストレス(内因)、過労、飲食の不摂生などによって、体の中の陰陽のバランスが崩れることから、様々な病気になると考えられています。

 よって、漢方治療の根本は、漢方薬であれ針灸治療であれ、この乱れた陰陽のバランスを整えるということを主眼にし、自己治癒力が最大限発揮された結果として「病気が治る」ということになります。(漢方薬が直接、病気を治すのではなく、あくまでその方の自己治癒力が病気を治すのです。

 また、陰陽のバランスが整った時に発揮される自己治癒力というものは人によって強弱がありますが、その部分に関しては日頃の養生が大事であるといえます。

 この考え方は、例えば肺炎にかかったときに、病気の原因は何かと考えたときに、西洋医学的な発想との違いが明らかになります。

 即ち、肺炎は細菌が原因であって、細菌を殺す抗生物質を投与することが西洋医学的な治療と言うことになりますが、漢方の考えでは細菌を吸い込んだとしても自己治癒力が旺盛で有れば、発症することもないし、肺炎にかかったとしても自己治癒力が働けば発熱などはするものの抗生物質を飲まなくても治ります。

 また、見落とされがちですが、肺炎にかかって抗生物質を服用して治ったと言っても、100%抗生物質が効いたという訳ではなくて、あくまで自己治癒力(免疫力)プラス抗生物質として効果が出ているということです。この為、衰弱が激しいような場合~自己治癒力が殆ど無くなっているような場合は、いくら抗生物質を投与しても効きません。

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