「気」とは?

わかりやすい漢方講座(その5)~「気」とは?

 漢方では、「気(き)」「血(けつ)」「津液(しんえき)」「精(せい)」というものから人体は構成されているとされています。今回は、「気」とは何か?という事についてです。

 「気」という言葉、日常生活の中でも頻繁に登場(気持ち、天気、陽気、気功・・・)しますが、漢方に於いて「気」とは何かというと、陰陽で言えば「陽」であり、人体の「機能」を表します。

 また、「病気」という言葉がありますが、約2000年前に書かれた黄帝内経(こうていだいけい)という書物には、「百病は気より生じる」とあり、病の始まりは「気」に問題が生じることだとされています。(俗に言う「病は気から」の元になった言葉ですが、日本で「病は気から」というと、ともすれば精神論的にとらえられますが、本来の意味ではありません)

 さて、それでは「気」はどういった機能をはたしているのかというと、
1.「推動作用」
  人間の成長を始め、内臓や各器官の機能の発現、「血」や「津液」(=簡単に言うと水分)が全身を流れるためのエネルギーとしての役割のことです。(「血」は「気」のエネルギーで循環しているということです)

2.「温煦(おんく)作用」
  字の通り、体を温める作用です。機能的には、体温の調節ということになります。特にストレスなどで「気」の流れが滞った場合に、手先、足先に冷えを感じるという事がありますが、これはストレスなどにより「気」の温煦作用が末梢にまで届かない状態と考えられます。

3.「防御作用」
  病邪と呼ばれるものから体を守る作用と、病気になったときの治癒力を指します。特に、前者の「気」を「衛気(えき)」とよび、人体の体表部や粘膜を目には見えないバリア機能で守っています。このため、花粉症や風邪を引きやすい人というのは基本的には、この衛気に問題があることになります。

4.「固摂(こせつ)作用」
  簡単に言うと、汗や尿、血液などが必要以上に漏れ出さないようにする作用です。暑くもないのに汗が出るとか、尿漏れ、女性ですと生理の時にいつまでも出血が続くという場合、この「気」の固摂作用の低下が疑われます。

5.「気化作用」
  一般的な言葉としては、液体が気体になることを気化と言いますが、漢方で言う気化とは、物質転化という意味になります。具体的には、食べ物から体に必要な物質を取り出して「血」に代えたり、不要な水分を尿として排泄したりする作用です。このため「気」のエネルギーの低下、特に胃腸のもっている「気」のエネルギーの低下は、食べ物から体に必要な物質を取り出せなくなって、貧血などの原因となり得ます。

 以上、簡単に「気」の作用について挙げましたが、「気」に関しては、「気」そのものの力が低下している(=「気虚(ききょ)」)か、ストレスなどにより「気」の流れが滞る(=「気滞(きたい)」)結果、上に挙げた「気」のもっている機能が発現できなくなって「病気」になるというパターンが多く見受けられます。

 よって、最初の「百病は気より生じる」という事からすれば、健康の基本は、「気」の力が衰えないように維持していくことと、「気」の流れが滞らないようにするという二つのことが重要であると言えます。

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