「わかりやすい漢方講座」(その1)~「漢方」ってなに?
漢方医学の最大の特長は「天人合一」思想と呼ばれるもので、人体は、その形や機能が天地自然と相応しており、自然との調和を通じて健康を維持していこうというものです。また、「天の季節」「その土地の環境」「人」によって、同じ病気でも用いられるべき処方が異なるという、「三因制宜(さんいんせいぎ)」という考え方が根底にあり、最先端医療で云われている「オーダーメード医療」の考え方をその基本にしています。
ところで、何げなく使っている「漢方薬」や「漢方薬局」の「漢方」という言葉、どこから来ているのかと言いますと、漢方医学の基礎理論が書かれた「黄帝内経(こうていだいけい)」や、葛根湯(かっこんとう)などの湯液治療について書かれた「傷寒論(しょうかんろん)」、現存する最古の本草書(生薬について書かれた本)である「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」などが、中国の漢の時代(前漢:紀元前202年?後8年、後漢:西暦25年?220年)に成立し、その後現在に至るまで、多大な影響を与えているからです。
また、漢方医学は、古代中国の「易経」を原点とする「陰陽論」に「五行説」と呼ばれるものが加わり、合わせて「陰陽五行説」とよばれるもので体形づけられていますが、この「陰陽五行説」は古代より、漢方医学以外にも暦(こよみ)から都市の設計まで幅広く根付いている考え方です。
西洋医学全盛の今日にあって、漢方医学の価値はどこにあるかというと、少なくとも2000年前に基礎理論が構築され、また多くの漢方処方が使われ出してから現在に至るまで、数え切れないくらいの臨床経験が積み上げられてきたという事です。その間、ずっと使われ続けている処方もあれば、時代の変遷につれて人々の生活や食生活などが変化するたびに、その時代の名医によって、より優れた処方が考案されるということを繰り返し、今日に至っています。