本日発売の『旅の手帖』6月号に当漢方マルヘイ薬局が掲載されました。今号の特集は”徳川家康の旅ってどんな旅”ですが、その中で”殿が好んだ漢方薬を大阪・道修町で”のコーナーで取材を受け、徳川家康が愛用していた「無比山薬円」という処方に関して取材協力させていただきました。
当薬局のある道修町は”薬のまち”として知られていますが、江戸時代にその発展に貢献したのが2代将軍秀忠はじめ歴代の徳川将軍であることや、徳川家康自身が生薬や漢方に詳しく、自ら生薬を調合して「無比山薬円」などを服用していたこともあって、徳川家康ゆかりの地のひとつとしてとりあげていただきました。
因みに「無比山薬円」は宋の時代に中国で記された『和剤局方』という書物に収載されており、地黄、山茱萸、山薬、杜仲など滋養強壮作用のある生薬を中心に12味からなる処方で、病気の治療と言うよりは老化予防の保健薬的な処方になります。現代の日本では販売されていませんが、”補腎処方”として有名な八味地黄丸をパワーアップしたような処方になります。徳川家康は愛用の薬箪笥の8段目にこの処方を保管していたことから、”八の字”ともよんでいたそうです。
戦国の世を生き抜き、16人もの子どもをもうけ、75歳という長寿をまっとうした徳川家康ですが、漢方的には五臓の”腎”が極めて強かったといわざるを得ません。その要因のひとつに、「無比山薬円」のような”補腎処方”を愛用していたことが考えられます。漢方では五臓のひとつである”腎”は生命の根源とされ、人間が老化していくことは即ち”腎”が衰えることであり、中年以降は”補腎処方”とよばれるものを服用することが長生きするために必須とされています。
尚、「無比山薬円」は日本では販売されていませんし、どんな体質にも合うわけではありません。日本で販売されている主な”補腎処方”は、六味丸、八味丸、杞菊地黄丸などのほか、高貴薬の鹿茸が配合された鹿茸大補湯、鹿茸活腎精など多数ありますが、ご本人の体質に応じて適切な処方を選ぶことが大事です。