放射能から身を守るには(4)

 過去に、様々な研究機関の実験などにより、いくつかの種類の漢方薬に放射線障害に対する防御作用のあることが示唆されていますが、共通点としては抗酸化作用を有する点と、主に胃腸の機能を高める作用が有るという点です。反対に言えば、放射線が胃腸に直接障害を与えることをいかに防ぐかが重要となるわけですが、これからの課題として、胃腸の組織や細胞に直接障害を与えない程度の放射能を含んだ食品を日常的に摂取した場合に、健康を維持するためにどうすべきかと言う点について考えてみました(おことわりしておきますが、どの漢方処方が放射線障害に防御効果があると言われているのかは、重要ではありません。漢方薬は基本的に、それを服用する人の体質に合っていなければ十分な効果を発揮しませんので、人それぞれ適した処方は異なると言わざるを得ません)。

 さて、放射能で問題になるのは、放射線の影響による活性酸素の発生であるという話しは前回書きましたが、別の観点から、放射線は外国で食品の殺菌に使われるほどですから、人間の腸内細菌にも悪影響を与えることは十分に予想されます。

 人間の胃腸には、300種類、100兆個にもおよぶ腸内細菌(1kgもの重さになると言われています)が棲息しており、栄養物の消化、吸収、水分代謝のみならず免疫にも大きく関与しています。即ち、腸内細菌バランスの善し悪しは、人間の健康状態に大きく影響しているわけです。

 この腸内細菌バランスに悪影響を与えるものとしては、おなかを冷やすこと、食事の不摂生、精神的なストレスなどのほか、加工食品に含まれる防腐剤(細菌の増殖を抑える物質)などの化学物質が知られていますが、今後は食品中に含まれる放射能の影響も受けかねない状況です。つまり、今後は、腸内細菌バランスの悪化=胃腸機能の低下→免疫力の低下というパターンに陥いるリスクが増すと考えられ、いかに腸内細菌バランスを良い状態に保つか=胃腸の機能が正常な状態に保つかが、放射能から身を守る上で重要なポイントになります。

 腸内細菌バランスを良くするためには乳酸菌などを飲めばよさそうなものですが、最も重要なことは、腸内細菌がバランスの良い状態で棲息できるような胃腸の環境を保持することです。腸内細菌バランスが正常かどうかは胃腸の機能面に反映されますので、「毎食、健康的な食欲がある」、「食後に胃がもたれたり、眠くならない」、「便通が正常」という漢方的な胃腸機能診断基準が満たされているかどうかで確認することができます(もし、「食欲」、「食後のもたれや眠気」、「便通」の3つうち、2つ以上に問題が有れば脾気虚=胃腸機能低下です)。

 胃腸機能が良好な状態(腸内細菌バランスが良好な状態)を保つ為には、おなかを冷やさない、精神的なストレスをためない、夜はぐっすり眠るなどのほか、発酵食品や穀物、豆類、芋類など胃腸機能を元気にしてくれる食材を摂ること、その民族が先祖代々食べてきたものを中心に食べるなど食事に気をつけることが重要です。それでも、胃腸機能に問題があるときは、漢方薬などで胃腸機能を正常化させることはお勧めします~もちろん、その方にあった処方で。

 要するに、放射能~“健康に影響を与えない”レベルの放射能(?)~に対して、特別な漢方処方があるわけではなく、これまでも食事をはじめとする生活の不摂生が、胃腸機能低下~免疫力の低下につながっていたわけですが、今後は新たに放射能による腸内細菌バランスの悪化=胃腸機能の低下というリスク要因が加わると考えられ、今まで以上に胃腸の機能面を正常に保つ(=自己の免疫力を十分に発揮することができる状態)必要性がでてきたということです。

 ※尚、このブログで再三書いてきましたが、胃腸の機能はレントゲンや胃カメラには写りません。健康診断で、胃腸は正常と言われても、器質的な問題がないというだけであり、機能面が正常化どうかまではわかりません。

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