放射能から身を守るには(1)

 今回の野菜や水の放射能汚染問題は、収束に向かうことを願うばかりですが、色々と調べてみました。

 はじめに、放射性ヨウ素に関しては、ヨウ素を摂ると良いとされています。これは、問題となるくらいの量の放射性ヨウ素が拡散した場合、極めて吸収性の高いヨウ素製剤=ヨウ化カリウムの錠剤を服用して自らの甲状腺をヨウ素でいっぱいにしておくことで、放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれないようにしておくためのものであり、放射性ヨウ素以外の放射性物質の影響をも低減させるものではありません(ヨウ化カリウムは医療用医薬品であり、報道によると大量のヨウ化カリウムが公的な機関に備蓄されているそうで、いざというときには配布されることになっている筈です)。

 食品としては根昆布にヨウ素が多く含まれていることから注目されていますが、ヨウ素の吸収に関しては即効性に欠けるとされ、いざというときになってから食べても間に合わない可能性があります。ただし普段から昆布などの海藻類を多めに摂っておくのは甲状腺の病気などでヨウ素の摂取に気をつけるように指導されている方を除いて有益ではないかと思います。ただし、粉末になったものなどを大量に服用するとおなかの中で水分を吸って膨張しますので、一度に大量の服用はお勧めできません。

 さて、今や放射性物質は世界中に拡散しているようですが、特に日本国内では、避難や屋内待避をする必要のないエリアで暮らしていても、「直ちに人体に影響はない」程度に汚染された水や野菜にかこまれて生活することになりそうです。よって、様々な放射性物質による障害から身を守るにはどうすれば良いかを考える事も重要かと思います。

 色々調べてみたところ、独立行政法人の放射線医学総合研究所のプレス発表では、平成17年に「ビール成分に放射線防護効果を確認」という発表があります。この研究のもとになったアルコール飲料が放射線障害を低減させるという話しはチェルノブイリや広島での被爆者の治療に当たっていた医療関係者から報告があったようですが、アルコール絡みでは、つい最近も、赤ワインに含まれる抗酸化物質にそのような効果があるとのアメリカの大学の発表もありました。醸造酒に含まれる成分に細胞を保護する働きがあるのと、アルコールの利尿作用による体外排泄作用も関与しているように思います(広島や長崎での被爆後の調査などでは、民間療法として利尿作用や下剤的な作用のある民間薬が病状の回復に有用であったとする報告もあります)。

 更に同研究所の平成18年の発表には、ラクトフェリンに放射線防護効果があることや亜鉛などのミネラルに強い放射線防護効果が動物実験で認められたことが発表されています。また、これらの発表文中にも触れられていますが、乳酸桿菌の加熱死菌体にも放射線防護効果のあることが報告されているようです。

 また、過去のチェルノブイリ事故の際のロシアに於ける臨床データでは、白ロシア共和国の放射線医学研究所の臨床試験で、被爆児童に対してスピルリナの錠剤を45日間投与した時に尿中のセシウム濃度が半減し、体内放射性物質の排泄が促進されたというものや、ロシアのグロドネンスキー国立医学研究所からは、低レベル放射線暴露を受けた児童に対してスピルリナを45日間投与した時に、異常に高くなっていた血中の免疫グロブリン濃度が低下したという発表がなされています。

 これら放射線防御効果が期待できると発表された物質の共通点は、一般的な言い方ですと、抗酸化物質であったり免疫(特に腸管免疫)を高める作用のあるものであり、放射線の影響による白血病やガンといった疾患を考えても、普段の免疫力を高めに維持しておくことが重要になると思います。

  即ち、漢方で“毒邪”と呼ばれるものに相当する放射線の影響に対しては、滞りなく排泄(デトックス)することと、“正気”(簡単に言えば免疫力)を高めておくことが重要で、その為には腸内細菌バランスをはじめとする胃腸のコンディションを良い状態に保っておくことが最優先課題になります。本ブログの「日本人のための食養生」に記してあるような食養生の基本を守ると共に、できればファイトケミカルと呼ばれるような抗酸化物質を多く含む野菜などを摂取するのが望ましいですが、野菜などの放射性物質が危惧されるケースでは、健康食品などの活用も必要になってくるかも知れません。

関連記事

  1. 「食」の基本的な考え方

  2. 大自然の生命力とつながる食生活17項目

  3. 有害物質から身を守る方法(2)

  4. 子どもの健康と食育

  5. 食べ物と胃腸の関係

  6. 有害物質から身を守る方法