有害物質から身を守る方法

日本人のための食養生(9)〜有害物質から身を守る方法

 くり返される食品の偽装問題、農薬や化学肥料、土壌汚染、遺伝子組み換え作物、養殖魚や家畜に使われる抗生物質やホルモン剤、O−157やノロウイルス、輸入穀物や果物に使われるポストハーベスト、更には食器や鍋などから溶出する化学物質の問題など、現代は「食」に関する不安が尽きません。

 有機栽培や低農薬野菜、なるべく添加物の少ない物を選ぶと言っても限度があります。また、インスタント麺や発色剤の入ったハムなどは、一旦ゆでこぼして添加物を流し出すといった事もやるに越したことはありませんが、きりがありません。

 次に考えられるのが、口から入った有害な物質を体から排出する作用(最近はやりの言い方ですと「デトックス」)のある食材や、有害物質が体内で有害な作用を起こさないように活性酸素を除去する作用の強い食材を積極的に食卓に取り入れると言うことです。

 代表的な食材としては食物繊維を多く含む根菜類、ビタミンのAやC、Eを多く含むカボチャや枝豆、香味野菜などのほか、活性酸素除去能力の強いルイボスティーやキャベツなどが挙げられますが、これまたいちいちこだわってメニューを考えるのも気が重くなります。

 日本人にとって一番簡単で理にかなっているのは、伝統的な和食を食べると言うことです。例えば、玄米などには重金属を排泄する作用のある物質が含まれていますし、焼き魚などには大根おろし(消化を促進させるだけでなく、ビタミンCが豊富で魚や肉の焦げたところの毒性を弱める)を添えたり、マグロの刺身にはワサビ(肝臓の解毒力を高める活性が強い)、食事の際には味噌汁(味噌〜大豆のポリフェノールには活性酸素を抑える作用がある)、海苔やワカメといった海藻類(デトックス効果やモズクなどに含まれる成分には免疫増強作用もあります)、梅干し(強力な殺菌作用とともに胃腸の働きを良くします)、漬物(乳酸菌などにより整腸作用)などを中心とした食事を心がけることで有害物質を排泄もしくは排出できます。

 もっと簡単なのは「よくかんで食べる」ことで、唾液に含まれるペルオキシダーゼが食品中の発ガン物質を強力に分解してくれます。

 ただし以上の事はあくまで「物質」面を中心にした議論で、漢方的な考え方からすれば何を食べても、胃腸の消化吸収機能(排泄機能も含む)がしっかりしていることが最も重要なことで、胃腸の機能が低下しているといくら有機野菜や自然食品を食べても体に必要な栄養素が取り込まれなくなりますし、食品中の有害物質の排泄や無毒化もおろそかになります。

 更に、簡単に言えば胃腸から発生する「気」のエネルギーこそが「気力」の元であり、言葉をかえれば免疫力の発生源でもあります。現在わかっているのは60兆もある人間の細胞のいくつかは毎日何らかの影響を受けて変異(がん化)していますが、免疫力がちゃんと働いているとこれらを速やかに排除できるということです。

 ですから漢方の立場から見ると、胃腸の調子をいかに健全に保つかと言うことこそが長生きのための最重要課題であり、胃腸がしっかりしていれば多少の有害物質が体に入ってきても問題がないということです。

 ところが、現代日本人の多くは、多かれ少なかれ胃腸機能が低下しているのが現状で、その原因が飲食の不摂生ですので話がややこしくなります。(以下、次回に続く・・・)

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