日本人のための食養生(6)〜食べ物と胃腸の関係
このコーナーでも、人間は本来穀物を中心に食べるように出来ているとか、粗食というか伝統的な日本料理が体によいとか書いていますが、食べ物についての一般論としては正しくても誰にでも良いかというと必ずしもそうではありません。
よく問題になるのは、精白していない穀物(玄米や全粒粉のパン)は体によいといえば、そのとおりなのですが、胃腸がちゃんと機能しているという前提での話であって、胃腸の調子が悪いとか、消化吸収機能が完成していない幼い子供などにとっては、かえって胃腸に負担になってしまいます。
漢方の養生法でも、病弱な人とか、普通の人でも風邪で寝込んだりしたときには消化の良いお粥が基本であって、決してごちそうや玄米などをすすめたりはしません。要は人によって、あるいは同じ人でもどういった状況かによって、どういった食事が良いのかは違うと言うことです。
医食同源の流れで言えば漢方薬も同じで、いくら漢方薬の適応症に便秘だとか更年期障害と書いてあっても、その人のタイプによって効果が全く期待できないと言うこともあります。一般論で言えることでも個々の人にとって当てはまるかというと必ずしもそうではないというのが漢方薬や食養生の世界です。
さて、話を食べ物と胃腸の関係に戻すと、冷たいものや刺激物の摂り過ぎなど、食べ物自体の胃腸への悪影響という観点からは粗食というか伝統的な日本食が理想だと思いますが、食べ物は胃腸に入りさえすれば自動的に消化吸収されるわけではなく、胃腸の機能がちゃんと働いてはじめて消化と吸収が行われます。
また、食べ物自体の影響以外にも環境(湿気や冷え)やストレスの影響でも胃腸の機能は低下しますし、繰り返しになりますが離乳期を過ぎたばかりの子供や老人、あるいは闘病中の方などでは胃腸の機能が低下していることが多く、そういった方にはそれなりの食事が必要になると言うことです。
また、食事というのは日常の部分とは別に、特別な日の宴会や会食といった楽しみの部分も必要で、何が何でもこれを食べるとか、これは絶対に食べないというのも考え物です。
あと、日本の現状を考えると長期に渡って新薬を飲み続けていることで胃腸機能が低下されている方が多く見受けられます。意外かも知れませんが、H2ブロッカーなど、本来胃炎などの治療に使われる薬でも副作用として胃腸障害が起こることもあるほか、このような薬を飲み続けていると胃酸の分泌が低下して慢性的な消化不良状態が継続することにもなります。その他にも安定剤や抗アレルギー剤などにも唾液や消化液の分泌を抑制する作用のあるものが多く、漫然と飲み続けていると胃腸の機能低下を起こしやすいので注意が必要です。