漢方処方解説(10)~辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)
この処方は、17世紀の初め明の時代の「外科正宗」を出典とした処方で、効能として、専門的には「清肺通竅・滋陰」となっており、日本では「鼻づまり、慢性鼻炎、蓄膿症」などの効能が認められています。
効能通り、鼻の粘膜の慢性的な炎症(=鼻炎)に用いられる処方ですが、荊芥連翹湯との違いとしては、麦門冬、百合など生津滋陰作用のある薬味が配合されていることで、鼻の粘膜の乾燥にも対応できる点で、長年に渡る花粉症や通年性鼻炎などで、肥厚性鼻炎と呼ばれる、鼻の粘膜が腫れっぱなしになっておこる鼻づまりなどにも用いられます(血管収縮剤を含む点鼻薬の長期連用などでも鼻の粘膜が肥厚しやすくなります)。
鼻炎と一口に言っても、薄い鼻水がダラダラでるものから、濃い鼻水が詰まるもの、鼻の粘膜の肥厚により鼻が詰まるものまで症状はさまざまです。また、1日のうちでも、午前中は鼻水ダラダラだったものが昼から鼻の粘膜の乾燥と腫れを呈したり、極端な例では基本的には濃い鼻水が詰まるものの、お風呂で温もると薄い鼻水が出だすというものまで、その方の体質や肉体的、精神的状況の違いなどによっても症状は違ってきます。
この辛夷清肺湯は、濃い鼻水や蓄膿症のタイプに最も合うとされているものの、例え薄い鼻水でも、温まると濃い鼻水が薄い鼻水に変化するような場合や鼻水がなくても肥厚性鼻炎による鼻づまりなどには適合する可能性が高い処方です。
また、辛夷清肺湯がよく効くという方は、アルコールや唐辛子など“熱性”の食品の影響により鼻づまりが強くなる可能性がありますので注意が必要です。