漢方処方解説(6)~小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
小青竜湯は約2000年前の傷寒論を出典とする処方で、専門的に言うと「水飲内停」と呼ばれる“不要”な水分を抱えている人に、“風寒の邪”が影響して、悪寒、発熱、鼻水、痰の混じった咳などの症状が出る時に用いられる処方です。
日本に於ける効能書きで最も本来の使い方に忠実な書き方としては「胃部に水分停滞感があり、喘鳴を伴う泡のような希薄な喀痰の多い咳嗽があるもの或は鼻汁の多い鼻炎の如く分泌過多のもの」の「気管支炎、気管支喘息、かぜ引き、鼻炎」などとなっています。
日本では冬場のかぜのシーズンから花粉症のシーズンに、鼻炎に対して使われる処方ですが、どのタイプの鼻炎にも効くわけではなく、あくまで胃部に“不要”な水分を抱えている人が、冷えや花粉などの刺激によって鼻から水があふれてくるような鼻炎に用いられる処方です(人によっては、鼻水がダラダラでないこともあります)。
漢方的に考えたら、現代日本人は、冬の寒い時期でもビールや冷蔵庫から出したての水やお茶を飲む人が多く、その結果、胃腸を冷やしすぎて、胃腸の機能低下から水分代謝に乱れを生じ(胃腸は飲食物に含まれる水分以外に、唾液、胃液、胆汁、膵液などの消化液が1日に合計10リットルくらい流れており、胃腸機能低下により、下痢やむくみといった“不要”な水分が発生しやすくなります)、胃部に水分停滞をきたしている方が増加の一途をたどっており、このことが日本に於ける花粉症患者の増大の大きな要因となっています。
さて、話しを小青竜湯にもどすと、即効性に優れており、服用後、早ければ10分以内に鼻水が止まることもあります。ただし、新薬の抗アレルギー剤などのように眠たくならないという利点はあるものの、漢方薬といえども対症療法の処方に違いはなく、飲み続ければ体質改善になるといったものではありません。また、日頃から体力の弱い方などでは、いくら鼻炎で鼻水が出るといっても、小青竜湯が合わない場合もあります。反対に、小青竜湯がよく合うという方は、日頃の生活習慣、特に冷たい水分の過剰摂取などを見直すことが花粉症の体質改善にもつながります。