参蘇飲(じんそいん)

漢方処方解説(4)~参蘇飲(じんそいん)

 一般的にはあまり馴染みのない処方かもしれませんが、中国ではかぜ薬としてポピュラーな処方です。日本では、漢方のかぜ薬=葛根湯という図式が出来上がっていますが、葛根湯はあくまで体力が中等度以上の方で、寒けがして汗が出ず、首の後ろのこりが強いかぜの初期症状に、風邪(ふうじゃ)を追い払う目的で使用されます。

 これに対して参蘇飲は、普段から胃腸が弱くてかぜを引きやすく、引いてしまったらいつまでも咳が出たり、、痰がからんだり、鼻水が出たりといった症状が続いて治りにくいという方に用いられる処方です。専門的には、益気解表といってかぜに対する抵抗力を高めることに力点が置かれており、ちょっとだるいとか、軽く頭痛がするといった段階で服用すると、よく効きます。

 別の見方をすれば、体力の低下した人は葛根湯の適応となるような、急に首の後ろがこわばるとか、強い寒けや頭痛といった症状は起こりにくく、しょっちゅうかぜのような症状を繰り返すというパターンになりやすく、参蘇飲はそういった方にお勧めの処方です。

 ところで、胃腸が弱いとかぜを引きやすいというのは、漢方理論ではからだの皮膚や粘膜を外邪から守っているバリアのようなものを衛気(えき)と言いますが、この衛気の発生源が主に胃腸なので、胃腸が弱い人は防御力(免疫力)が低下しやすくかぜを引きやすいという理屈になります。よって、普段は体力のある方でも暴飲暴食や冬の寒い時期に冷たいビールなどでおなかを冷やすとかぜを引きやすくなるので注意が必要です。(胃腸は漢方の五臓六腑では「脾(ひ)」と呼ばれますが、胃腸が弱い=「脾(ひ)」が弱い=「ひよわ」となります)

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