藪伊豆総本店のもりそば

 東京といえば「そば」ですが、お江戸は日本橋にある藪伊豆総本店というお店のもりそばです。東京では「藪そば」というのは、おそば屋さんの中でもビッグネームで、神田、上野、浅草にある「藪そば」が御三家だそうですが、このお店は、もともと江戸時代から「伊豆本」という名前でやっておられたのが、明治時代に「藪そば」の「藪」の一字をもらって「藪伊豆」となったそうです。

 さて、大阪の感覚では「ざるそば」という言い方が一般的ですが、写真は「もりそば」です。メニューには「ざるそば」なるものも載っていますが、意外にも「もりそば」と「ざるそば」は似て非なるものだそうです。

 では、何が違うのかというと、丸いざるに盛って、上から海苔がかけられているのが「ざるそば」で、四角い蒸籠(せいろ)に平たく盛って、海苔をかけないのが「もりそば」だそうです(写真は、蒸籠が2段重ねになっていますが、大盛りと言うことではなく、普通の1人前です。ざるそばのようにうず高く積み重ねないので、2枚重ねになっているようです)。更に、細かいことを言えば「ざるそば」は冷たくして食べますが、「もりそば」は温かくしても食べられますので、そば粉の配合比率から「つゆ」の味付けも違ってくるらしいです。

 因みに「そば」は中国語でも「蕎麦」で、日本でも中国でも、もともとは雑穀として米などと共に食されてきましたが、やがて石臼などで粉にして麺類として食されるようになったようです(現在の中国でも、黄土高原とよばれる山西省や内モンゴルなどでは製法は違いますが、そば粉を原料とした麺は食べられています。また、韓国冷麺の麺にもそば粉は使われています)。

 さて、蕎麦の薬膳的な効能としては、胃腸の機能を良くしたり、体にこもった余分な熱をさましたりする作用があるとされています。現代化学的には、フラボノイドの1種で血管を強くするルチンや、ビタミンB1などが豊富に含まれており、糖尿病や高血圧の方にはお勧めです。

 最後に、「ざるそば」でも「もりそば」でも「そば湯」がつきものですが、これは冷たい食べ物を食べた後に温かいそば湯を飲むことで、胃腸が冷えるのを防ぐという重要な意味があります。

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