会席料理の前菜

Photo_52  姫路のホテルの中の日本料理店のメニューより

 日本料理の特徴のひとつに季節感を重視するというのがあります。現代のようにハウス栽培や冷凍保存技術のない時代であれば、洋の東西を問わず季節の食材が並ぶのは当たり前ですが、日本料理は器に至るまで季節を意識するところが違います。これは、中国や西洋料理のように豚や鶏肉などの動物性の食材を使わなかった(食べなかった)ことも影響しているかと思います。

 ところが、現代日本では半分以上の食料を海外から輸入しているばかりか、ハウス栽培などの影響で食材の季節感がどんどん失われているのが現状です。更にクーラーや暖房などの設備が行き届いたことから、季節感に乏しくなってきています。

 だから何が問題なの?と言われそうですが、ひとつは季節はずれに栽培された野菜などはビタミンなどの栄養素が極めて少なくなることです。実際に、食品成分表の数値では1963年に比べて2000年では可食部100g中の、ほうれんそうに含まれる鉄分は3.3mgから2.0mg、ビタミンCに至っては100mgから35mgへと大幅に低下していますが、化学肥料の使用の拡大だけでなく年中出まわっていることから平均的な栄養素の数値が低下しているとも読みとれます。

 更に、薬膳的な発想から言えば、キュウリやナス、トマトなどの夏野菜(これらが夏野菜だと知らない人の方が多いかも知れません)は、基本的に体を冷やす作用があり、これらを寒い季節に食べるのは、体にとって好ましくありません。また、食材を栄養素だけで表すのが現代栄養学ですが、薬膳というか漢方的な発想は、その食品(生薬)の栄養素や有効成分だけでなく、体を冷やしたり、温めたりする性質や五臓六腑のどこに作用するかなどを重視しますし、人間も自然の一部であるという発想に立てば、それが正しいと思います。また、そういった考えを最も取り入れているのが日本料理であるようにも思います。

 

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