このブログでは、食養生と健康に関するテーマで記事を書いてきました。漢方的な考え方では、人が健康で生きていくためには、まず五臓六腑の中でも胃腸の機能が正常であることが最も重要であり、胃腸の機能を悪化させるような食べ物や食べ方を避けるべきであることを強調してきました。
ところが、一般の受け止め方としては健康診断で胃腸に問題がないから大丈夫とか、ガスターやパリエットなどの胃薬を飲んでいるから胃腸の調子は安定しているから問題ないと安易に考えている人が多いことに驚かされます(健康診断でわかるのは胃腸の粘膜の状態が正常かどうかで、粘膜に炎症やポリープがないからといって胃腸機能が正常とは限りません)。
そこで、漢方的な考え方では胃腸機能が低下した状態が続くと、どういった疾患につながると考えられているかを挙げておきます。今回は、胃腸機能低下と関連性のある疾患名だけを挙げておきますが、なぜそうなるのか漢方的な理屈は省きます。
胃腸は気力の発生源として重要で、胃腸機能低下は気虚と呼ばれる状態の原因となることから免疫力の低下(=かぜやインフルエンザに罹患しやすくなるほか、長い目で見ればガンにもなりやすくなる)に直結します。
また、アトピーや花粉症などのアレルギー疾患、喘息も胃腸機能低下と関係があるほか、気のエネルギーの低下は血液の流れにも悪影響を及ぼし、極端なことをいえば脳梗塞にもつながりかねません。
更に、胃腸の栄養代謝機能の低下は、糖や尿酸の代謝にも悪影響を及ぼし、糖尿病や痛風(高尿酸血症)の原因の一つとなります。また、栄養の吸収力の低下は貧血や早期の老化、不妊症にもつながります。
胃腸の水分代謝機能低下は、体内に余分な湿気や水垢のようなものが溜まりやすくなるとされ、ノイローゼや不眠からポリープなどの原因となるほか、神経痛にもつながります。
そのほか数え上げればきりがないほど様々な疾患の大元の原因を探っていくと胃腸機能機能低下につながっていきます。反対にいえば、だからこそ昔から胃腸機能を正常な状態に保つことが重要(専門的には「脾は後天の本」といいます)だったわけです。また、食養生が大事なのは栄養面のみならず、食べ方(季節のものを温かい状態で食べるとか、毎日規則正しい時間に食事をとるとか・・・)が胃腸機能に大きな影響を与えるからです。
昔は、こういったことは社会常識として広く一般にも知られていた事で、そういった養生をしていても病になったときに、漢方薬や鍼灸などの手を借りるという発想でしたが、現代日本では、日頃の養生がおろそかであるがために病気になっているというパターンが圧倒的に多いです。それも、暴飲暴食などといった誰でもわかるような不養生ではなく、ご本人は何も特別に不養生なことをしていると思っていないケースが殆どだと思います。
最近では一般の人向けの漢方の本や雑誌の特集号などもよく売れているようですが、「こういった症状や疾患には、こういった漢方薬が効く」と書かれていたとしても、養生の部分の問題と胃腸機能の問題をそのままにした状態では、その漢方処方の効果は半減する(もしくは殆ど効かない)といっても過言ではないです(個人的な経験からいわせてもらえば、現代日本に於いては殆どの疾患に関して、胃腸機能を改善する処方と、胃腸機能低下につながった養生面の改善が必要になります)。