かぜ、インフルエンザが流行ってきましたが、葛根湯をはじめとする漢方のかぜぐすりの服用に際してのポイントをおさらいしておきます。
まず漢方ではかぜに対して初期症状の時点で服用すべきものと、かぜを「引いてしまってから」服用すべき処方とは基本的に異なります。特に、葛根湯や銀翹散はかぜかなと思ったら早ければ早いほど良く効きます(できれば30分以内)。ところが、一般の新薬の総合感冒薬は、かぜの症状を抑えるだけの対症療法にすぎず、かぜを引いてしまってから服用するものですので、この感覚でかぜを引いてしまってから葛根湯を服用してもあまり効果は期待できません(もしぞくぞくっと寒気を感じて、手元に葛根湯などがない場合は、白ネギをたっぷり入れた熱い味噌汁を飲むだけでもいくらかの効果は期待できます)。
また、新型インフルエンザの時に良く効くとマスコミが無責任にとりあげた麻黄湯も同じく初期に服用すべき処方で、なおかつ抵抗力が旺盛な元気な方でなければ効果は期待できないばかりか、体力が弱い方にとってはまず合わない処方です(漢方薬は病名に対して処方が決まるのではなく、あくまで本人の体質などにより処方が決まるので、かぜやインフルエンザと言うだけではどの処方が一番合うのか決まりません)。
もう少し詳しく言うと、葛根湯や銀翹散、麻黄湯などの処方は、かぜの症状を抑えるものではなく、かぜと一般に呼ばれる風邪(ふうじゃ)を追い払って、かぜを「引かないようにする」ためのもので、頭痛や発熱、咳や鼻づまりといった症状が続くようなときには、邪を中和するような処方の適用になるか、かぜにたいする抵抗力を高めるような処方の適応になり、葛根湯などの適応とはなりません。
また、かぜの時の注意点としては、いくら熱があるからといって、からだはもちろんですが、特におなかを冷やさない、冷たいものを飲んだり食べたりしないことが重要です。そもそも冬にかぜが流行るのは、空気が乾燥することよりも温度が低くなることが最大の理由で、漢方的に理由を述べれば、かぜなどの病気に対する抵抗力を担う「気」のエネルギーの生成に関して胃腸が大きく関与していることと、「気」は陰陽で言うと「陽」の性質を持つためです。
また、抗生物質や抗ウイルス剤の効果も、あくまで「本人の免疫力プラス薬の力」で効果を発揮するものですので、おなかを冷やさないにこしたことはありません。