大いなる誤解(7)~やせる方が太るより危険!?
読売新聞の報道によりますと、成人後に5Kg以上体重が減った中高年は男女とも、死亡するリスクがそうでない人に比べて1.3~1.4倍も高くなることが、厚生労働省研究班の大規模調査(全国の40~69歳の男女8万8000人を平均13年間追跡調査)でわかったそうです。また、体重が増加した場合は死亡率に影響はなかったそうです。
この調査結果を分析した愛媛大学の斉藤准教授の「成人後に5~10Kg程度太るのは自然な現象。肥満の危険性が強調されることが多いが、体重減少も重視しないといけない」とのコメントが紹介されています。また、今回の調査ではなぜやせると死亡率が上がるのか原因はわからなかったとのことですが、体重低下で免疫力が低下したり、感染症にかかりやすくなることなどが考えられるとのことです。
報道内容からだけではわかりませんが、運動など積極的に努力してやせたとかではなく、特に何もしていないのにやせることが問題ではないかと思います。漢方的に考えると、「やせる」というのは陰陽で言うと「陰虚」に相当し、成人後、陰虚になりやすい最大の原因としては「気」のエネルギー低下=「気虚」であり、「気」は免疫力をはじめ身体にとって重要な「機能」が発現するために欠かせないものですので、今回の調査結果もうなずけます。
健康に関して、戦後の高度成長期以降、太りすぎやメタボの弊害ばかりがとりあげられやすい風潮が続いていました(※)が、最も長生きするのは標準体型よりも“少し太め”であることは以前からも指摘されてきました。また、現在の中高年が肥満気味といっても若い人達の間では栄養過剰よりも栄養失調の方が問題になってきているという指摘もなされている中での今回の調査結果は、今後の日本人の健康にとって考えるべき点が多いことを示唆しています。
(※)理由の一つ、もしくは最大の理由は、血圧やコレステロール、中性脂肪、血糖値などを“下げる”医薬品は次から次へ開発され、莫大な売上高となっている反面、これらの数値を上昇させる医薬品というのは殆ど存在しないことが挙げられます。