大いなる誤解(5)~カルシウムを摂っても骨が丈夫になるとは限らない
多くの人がカルシウムを摂りさえすれば骨が丈夫になると漫然と考えておられますが、カルシウムをいくら摂っても骨が丈夫にならないことがあります。もちろん、現代日本人の食生活を考えた場合、昔に比べて小魚や野菜、海藻類の摂取量が減少の一途をたどっており、骨を丈夫にするためにカルシウム分を積極的に摂るのは間違いではないのですが、カルシウムさえ摂れば骨が丈夫になるかというと必ずしもそうとは限りません。特に中年以降の方や、糖尿病や高血圧など生活習慣病をお持ちの方は要注意です。
これは、食事でいくらカルシウムを摂っても、そのカルシウムを体内に吸収するために活性型のビタミンDが必要になるのですが、ビタミンDを活性化させるためには腎機能が正常でなければなりません。腎機能が衰えて、活性型のビタミンDができなくなると、カルシウムが吸収されなくなって、血液中のカルシウム濃度が低下し、低下したカルシウム濃度を元に戻すために骨からカルシウムが溶け出し、骨が更にもろくなってしまうという現象がおこります。
このことは、漢方でいう五臓六腑の「腎」は骨や歯(漢方では歯は骨の余り~骨餘といいます)の健康に深く関わっているという理論に通じるものです。また、「腎」は老化によって機能が低下(腎虚:じんきょ)するので、中年以降に骨や歯を丈夫に保つためには補腎という作用のある漢方薬を服用することが重要とされてきました。また、漢方では、「腎」の衰えは、精力減退、腰やヒザのだるさや痛み、耳鳴りなどとも深い関係にあり、骨や歯の問題のみならず、簡単に言えばアンチエイジングの基本は「腎」を補うこととされています。
昨今は、医療機関などで簡単に骨密度を測定できる機械が普及していますが、骨密度が低いと指摘されたら、カルシウムの摂取も大事ですが、腰やヒザのだるさなど「腎」が衰えている兆候がある場合は、補腎作用のある漢方薬を併用されることをお勧めします。