大いなる誤解〜漢方薬の服用期間
漢方薬については「穏やかに効くものだからずっと続けた方がよい」という人もいれば、「漢方薬といえども医薬品だから、効果が出たら飲むのを止めた方がよい」という人まで、様々なイメージを持たれていると思います。
漢方薬でも花粉症の鼻水を止めるのに服用してすぐに効果が見られるものもあれば、1ヶ月単位で徐々に効果が現れてくるものまで様々です。
日本で正式に許可を受けて販売されている「漢方薬」は数百種類にも及びますし、その方の体質や病態によりどれだけ服用すれば良いのかは一概には言えません。
一般論で言えば、かぜなどの急性病に用いるものは症状が治まればその症状が出ている時だけ服用すれば良く、「血」や「精」といった物質的なものの不足を補おうとすれば3ヶ月は服用するべきです。
ただし、表面に表れてきた症状を抑えることに重点を置く西洋医学というか新薬に慣らされている現代人にとってはわかりにくいのですが、漢方の考え方では症状が発現するに至った原因を、体質面だけでなく生活環境なども含めて考えることが最重要事項で、症状はあくまで結果であり、たとえ症状が緩和したとしても、その症状が発現するに至った原因が改善されるまでは適切な漢方薬を服用した方が良いと考えます(もちろん、症状をやわらげる時に用いる処方と、その原因を改善するための処方は異なることが多いです)。
特に人間は30代を過ぎる頃から生命エネルギーが低下していきます(簡単に言えば「老化」、漢方では「腎虚(じんきょ)」と言います)が、言葉をかえると年々身体が弱っていくわけで、「腎虚」を補う作用のある「補腎薬」と呼ばれるような処方は、特につらい症状が無くても飲み続ける方が体に良いという発想があります。実際に中国では、女性は30歳を過ぎると、その人に合った補腎薬をサプリメント感覚で服用されている方が大勢居ます。
最近では漢方薬でも副作用を気にする方が増えてきましたが、体質やその病気の漢方的な発生要因に適合した処方を服用される限りは、漢方薬を飲み続けるメリットの方が、それを飲まないで病状が悪化していくというデメリットよりは大きいと言えます。