花粉症の原因は「花粉」ではない

大いなる誤解(2)〜「花粉症」の原因は「花粉」ではない

 いよいよ花粉症のシーズンですが、この時期になると気になるのは「・・・病」ではなく「・・・症」という言い方や、「花粉症の原因は花粉である」かのような言い方がされることです。更に、天気予報で花粉情報が流れることから、まるで寒い時期の「冷え症」とかいった感覚で花粉症が捉えられています。

 そもそも花粉のように、一般的には人に害を及ぼさないものの影響を受けて、鼻水や鼻づまり、目の痒みなどの症状が発生するのは、花粉そのものは誘因ではあっても、原因ではなく、花粉の影響を受けてしまう身体にこそ原因があると考えられます。実際に花粉症の方は、花粉以外にもハウスダスト(ほこり)や冷たい風、温度差などにも過敏に反応して鼻炎症状が出る方も多く見受けられます。

 花粉症の原因が花粉だという言い方をすると、花粉さえ防げば良いとか、一時的な症状なので対症療法でとりあえず抑えておけば良いという安易な考え方をしがちですが、花粉症を発症するという意味をちゃんと考えないと、知らず知らずのうちに他の病気へとつながっていきます。 

 花粉症について漢方の考え方では、皮膚や粘膜を守るバリアのような衛気(えき)と呼ばれる「気」の機能低下で、花粉やほこりに過剰に反応すると考えられています。要するに身体の防御力が低下した方が花粉症を発症するということです。

 花粉症でなくても、過労状態で気力低下した場合に「風邪(かぜ)を引く」というのも一時的に衛気が不足した状態と言えますが、花粉症の方はこのような衛気不足状態が慢性化していると考えられます。また、その主な原因は過労というよりは慢性的な「気」のエネルギー低下状態で、五臓六腑で言うと「脾(胃腸)」「肺」「腎」の3つの機能低下と関連性が強いと考えられています。

 もっとも、すごく元気なのに花粉症という方の中には、「気」のエネルギー不足と言うよりはストレスによる「気」の停滞というパターンも見受けられます(鼻水タラタラというよりは鼻づまりになります)。

 また、花粉症の原因が皮膚や粘膜を防御する「衛気」の不足か停滞に原因があり、日本人の多くが身体の防御力の低下をきたしているということは、ノロウイルスやインフルエンザに対しても防御力が弱いだけでなく、病気に対して抵抗力が低下していることになります。

 では、日本人の衛気が不足するようになった原因はといえば、つきつめれば食生活やストレスなど「養生」とよばれる部分の欠如が最大の原因だと断言できます。漢方では、花粉症の体質改善としては、その方の体質に応じて「脾(胃腸)」や「肺」や「腎」の機能を高める処方を用いますが、冷たいものは控えるなど最低限の養生は必要になります。

 
 

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