大いなる誤解(1)〜「薬が効く」と「病気が治る」訳ではない
日頃、様々なマスコミの記事や報道、あるいは人々の会話の中から感じることですが、日本の医療現場において「薬が効く」と「病気が治る」となんとなく思っている人がいかに多いかということを痛感いたします。
高血圧に降圧剤、糖尿病に血糖降下剤、神経痛に鎮痛剤、花粉症に抗アレルギー剤などなど・・・もちろん、希にこれらの薬を飲んでいるうちに治る方もおられますが、それは薬が治した訳ではありません。
健康診断で何らかの異常が見つかって、薬を飲んで検査数値が正常になったからといって、その病気が治ったわけではないのですが、中には薬を飲むことで検査数値が正常になったから病気が治ったと本気で考えている人もおられます。
東洋医学の考え方では、あくまで身体の中の五臓六腑や「気」や「血」や「水」のバランスや量、流れの善し悪しを正常化して、結果的に本人の自己治癒力を最大限発揮できるようにすることを目的というか、最終目的として考えますし、その結果として体内の状態が回復することを病気が治ると考えます。
また、東洋医学で重要視する養生とは、言葉をかえると自己治癒力を維持することが目的であり、自己治癒力を維持できれば病気にならないと考えます。また、病気と言うほどでもなくても身体に何らかの不調を感じる場合を「未病」とよび、この段階から積極的に体調を整える対策を考えます。
西洋医学を批判するつもりはありませんし、外科手術をはじめ、とうてい東洋医学の及ばない優れた点も多いのですが、現代社会においてはあまりにも西洋医学に依存しすぎるというか、極論すれば、薬が効くことと病気が治ることを同じ事のように思いこんでしまうことから、普段の養生がおろそかにされる傾向が著しいと感じられます。
要するに、病気になっても病院に行けば治る、というか「治してくれる」ものだという安易な考え方が蔓延しているのが現代日本の実情で、そのために食事を始め、普段の養生がメチャクチャと言っていいほどの状態になっており、ますます病気になりやすく、治りにくくなっている現状があるということです。