報道によりますと、先頃、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学らの研究チームが、通常は藻に感染するATCV-1ウイルスが、人ののどから発見され、調べてみると92人の健康な被験者の44%がこのウイルスに感染していることがわかったそうです。
このウイルスに感染したところで重篤な症状を呈するわけではないのですが、動物実験や人間で行った実験で、このウイルスは脳の認知機能に悪影響を与えることがわかったそうです。
健常者の半数近くから発見されたということは、人と共生している常在菌に近い存在のような気もしますが、脳神経の炎症との関連性が指摘されている慢性疲労症候群などとの関連性もあるかもしれません。
ウイルスに感染してると言われるとぞっとする人が多いかもしれませんが、本来、人間は皮膚や口腔内、大腸をはじめとする消化管内に存在する無数の細菌やウイルスと共生している存在ですし、そもそも細胞の中にあってエネルギーを産生しているミトコンドリア自体が太古の昔は好気性細菌であったわけです。
ヘルペスウイルスも成人の半数近くが体内にもってるとされており、人間の免疫力が低下したときに増殖して発症するだけのことで、ウイルスの存在自体はさして問題になりません。ATCV-1ウイルスも感染すること自体が問題ではなく、過労や睡眠不足で免疫力が低下したときに増殖して脳に悪影響を与えるような気がします。
漢方的に考えると、健康な状態というのは正気と邪気が拮抗している状態であり、決して邪気がゼロという状態ではありません(邪気がゼロの状態は、安逸過多といって致病因子の一つに数えられています)。要は、気のエネルギー(西洋医学的にいうと免疫力)がしっかりしていれば、強い病原性を有するようなウイルスや細菌の感染を防ぎ、常在菌に関しても人体にとって有害性をもつようなものの増殖を抑えることにつながります。
因みに、気とは肺ですった空気と、先天の腎気とよばれる先天的な生命エネルギーと胃腸が食べものから取り出した気の三つが合わさって生じるとされていますが、一番大事なのは胃腸が食べものからとりいれる気であり、その為には胃腸の機能が正常に働くことと、胃腸機能に悪影響を与えない食べものや食べ方が重要になってきます。それゆえ、養生の基本は食養生ということになり、江戸時代の貝原益軒が記した養生訓も殆どが食養生について解説しています。