例年より12日も早く、関西は梅雨入りしたそうです。今年は、年明けから寒い日が多くて、ここ最近は日によって寒暖の差も大きくなっていました。
漢方的には、日によって温度差が大きい日が続くのは“季節の変わり目”であり、五臓で言えば“脾”すなわち、“胃腸の機能”が弱い人にとっては体調を崩しやすくなる季節とされています。
また、梅雨に入って湿度が上がると、“脾は湿を嫌う”という大原則から、やはり胃腸の機能が低下しやすくなります。要するに、今年は胃腸が弱い人にとって、この数ヶ月は例年よりも体調を崩す方が多いようです。
具体的には、食欲がない、食後にもたれる、軟便がちなど胃腸の症状だけでなく、漢方では“脾”は気力の主な発生源であり、元気が出ないとか疲れやすくなるほか、お肌がかぶれやすい、毛穴が目立つというのも胃腸機能低下による“気”のパワー低下から発生しやすくなります。
そのほか、胃腸の水分代謝機能が低下して、体内に余分な湿気がたまりやすくなり、身体が重だるい、しょっちゅう頭痛がする、神経痛などの痛みが強くなる、むくみやすいなど、一見、胃腸と関係なさそうな症状も漢方的に考えれば“脾”=胃腸の問題です。
もともと“脾は後天の本”という言葉があり、人間が健康で生きていくためには、まず胃腸がしっかりしていることが大前提であり(胃腸機能=“脾”が弱ければ、すなわち“ひよわ”)、胃腸機能の低下は全身に様々な悪影響を及ぼします。
雨が降り続いて、湿度が高くなるのは仕方がないとしても、この時期に注意しなければならないのは、おなかを冷やさないことです。湿度と共に胃腸機能を低下させる外的な要因が“冷え”であり、梅雨時に冷たいものを摂りすぎると、胃腸機能の低下を招きやすくなります。
また、ストレスと胃腸機能の関係では、精神的なストレスは「気」の流れを停滞させ(“気滞”といいます)、胃腸機能にも影響しますが、胃腸機能が低下した状態では、全身を巡る「気」のエネルギーが低下するために、ちょっとしたストレスで「気」の流れが停滞しやすくなります。簡単に言えば、胃腸機能が正常な時なら気にならないような些細なことでも、胃腸が弱っている方にとってはストレスとなる訳で、このことが更に胃腸機能の低下の原因となって・・・という悪循環に陥ります。
更には、湿気は、それだけで「気」の流れを邪魔して、イライラや不安感が増すとされています(一般にも、雨が降ると「鬱陶しい」というのも、この湿気が「気」の流れを停滞させることを指してます)。特に、胃腸機能が低下して、体内に余分な湿気がたまっていると、環境の湿気と共鳴現象(漢方では「同気相求」といいます)をおこして湿気の影響が強く表れるとされています。
この時期の胃腸機能低下には燥湿健脾という効能のあるような処方が用いられることが多いですが、胃腸に自信のない方は体温以下の温度のもの(=「冷たいもの」)を、できるだけ摂らないようにする事が大事です。