日経新聞の報道によりますと、厚生労働省の行った大規模な疫学調査で、乳製品を多く摂る男性は前立腺ガンになるリスクが増加することがわかったようです。
ここ最近、日本でも乳製品の弊害に関する議論が多くなってきましたが、中身をよく見てみると牛乳を飲んだ方が「健康に良い」というデータと「健康に良くない」というデータの両方があって、肯定派も否定派も自分に都合の良いデータだけを持ち出して議論するということが行われてきました。
これらの議論では、乳製品が身体によいかどうかというのは、その民族なり、個人の身体の消化酵素などにより違ってくるという当たり前の視点が欠けていましたが、今回のデータはそう言った意味では、やはり日本人には乳製品は合わないということが示されたと思います。
そもそも哺乳動物である人間は離乳期までは乳糖分解酵素の活性が高いのですが、成長するにつれて乳糖分解酵素の活性は低下し、かわってデンプン分解酵素の活性が高くなっていきます。成長した個体が母乳を飲むことは、種の存続にも関わるので、これが自然の姿であるといわれています(牛は成長したら決して牛乳を飲みませんが、それでも筋骨隆々です)。
特に日本人というか、赤道を中心とした低緯度地域で長年暮らしてきた民族は、農作物で食料を十分にまかなえることから、離乳期を過ぎたら乳糖を分解する酵素は不要になります。ところが、高緯度地域や砂漠地帯など、農業に向かない地域に暮らす民族は、家畜を飼育し、その乳を食料としなければ生きていくことができなっかた為、そういった民族では成長してからも乳糖分解酵素の活性が低下しないことが知られています。
要するに、先祖代々乳製品を摂ってきた民族と、日本人のように明治時代まで、殆ど乳製品を口にしてこなかった民族では、同じ乳製品を摂っても体内の消化、吸収、代謝が異なるということです。(因みに、現代日本の食の混迷の原点は明治になって、いきなり高緯度地域である欧米の栄養学を導入したことに始まります→「食」の基本的な考え方参照)。
今回の厚生労働省の発表に対しては、乳製品の業界団体を始め多くの反論が出てくると思いますが、日本人にとってどうなのかという視点での議論を期待します。