ストレスと血流障害

わかりやすい漢方講座(41)~ストレスと血流障害

 ストレスが充満している現代社会では、ストレスが原因となる疾患は山のようにありますが、特に女性に於いてはストレスの影響で「血」の流れが停滞しがちになって、漢方で言う「淤血(おけつ)」の状態になりやすく、そこから子宮筋腫や内膜症などになっていく方が年々増えているように思います。

 漢方的にみた場合、ストレスといっても「怒」・「喜」・「思」・「悲」・「憂」・「驚」・「恐」の七種類が挙げられていますが、現代社会に於いて特に多いのが「怒」というタイプのストレスです。

 「怒」という文字の本来の意味は「奴(やっこ=奴隷)」の「心」を表しており、即ち自分の思い通りにならないことに対してイライラするというストレスを表しています。このタイプのストレスにさらされると、漢方の考えでは、全身の「気」の流れの停滞(漢方では「気滞(きたい)」といいます)が発生し、スムーズに流れるべき「気」の流れがギクシャクしてきます。

 具体的な症状としては、胸や脇が張る、ゲップやガスが多くなる、生理の周期が一定しないなどですが、漢方では「血」というものは「気」のエネルギーによって全身を巡っていると考えられますので、「気」が滞ることによって末梢の血流が悪くなり、手先足先が冷えるといった症状も発生しやすくなります。(また、この状態では無意識のうちに唐辛子などの辛いものを食べたくなったり、涙もろくなったりもします。)

 更に、この状態が続いていくと今度は、慢性的な「血」の流れの停滞を引き起こし、漢方で言う「淤血(おけつ)」という状態になります。この段階では慢性の肩こりや頭痛、お肌のくすみ、生理痛や経血にレバー状の血塊が混じるというだけでなく、子宮筋腫なども発生しやすくなります。

 また、この状態を更に放置しておくと、全身の血流が悪くなって動脈硬化が進行しやすくなり、心臓疾患や脳疾患なども発生しやすくなります。

 漢方では、以上の一連の流れの中で初期段階では「気」の滞りをなくす処方、淤血(おけつ)に対しては淤血の程度に応じて「血」の流れを良くする処方を用いますが、できるだけ早い段階から対処するに越したことはないです。

 特に「気滞」の段階での養生法としては、休みの日に家でゴロゴロするよりは適度に体を動かしたり、食べ物ではハッカやミント類、香味野菜などを摂るようにするなどですが、「感情的に泣く」というのも「怒」というタイプのストレスの発散には有効であるとされています。

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