わかりやすい漢方講座(33)~インフルエンザの漢方療法
タミフルの副作用について、色々と問題になっていますが、以前からタミフルと精神異常の関連性は指摘されていましたし、日本で最も使われている合成抗菌剤(抗生物質)の添付文章の副作用欄に「錯乱等の精神症状」というのが明記されています(もっとも最終的にタミフルが原因なのか、インフルエンザのウイルスなどが原因なのかはわかっていません)。
今回の騒ぎを見ていて思うのは、一般の方にとっては、薬に副作用があることがあまり認識されていないんだろうなという事です。副作用は、ないに越したことはないですが、殆どの薬ではなくて全部に、様々な副作用があります。
昨今では、医療用の薬を病院や薬局で受け取るときに「くすりの説明書」がついてきますが、薬効や飲み方の説明以外に「何かあれば医師又は薬剤師に申し出て下さい」と書かれているはずです。問題は、「何かあれば」の「何か」の中身です。メーカーの添付文章には、まず一般の人が読めば、殆どの人が服用を躊躇するくらい膨大な「副作用」についての記述があり、とても総てを書ききれないですし、また、書いたとしたら現場で相当な混乱を生じる筈です。
さて、副作用の問題は別にして、本題のインフルエンザについて、漢方ではどう対処するかと言うことですが、まず、衛気(えき)と呼ばれる皮膚や粘膜を防御している「気」のエネルギーを高めることで、ウイルスの感染を防ぐというのが第1段階です。この衛気の低下を引き起こす原因は過労などもありますが、「胃腸を冷やす」ことでも結果的に衛気のパワーは低下しますので、冷たいものは控えるべきです。
次の段階として、インフルエンザにかかりそうなとき(なんとなく体がだるくて、のども痛くなってきたような時)は、中国では板藍根(ばんらんこん)という生薬の煎じ液でのどをうがいしたり内服したりします(冬場に中国のスーパーなどでは、この板藍根の顆粒になったものが山積みにされているほどポピュラーです)。また、漢方処方としては葛根湯ではなく、銀翹解毒散や天津感冒片という処方を服用することで初期の段階なら十分対応できます。
また、いよいよインフルエンザになってしまって、高熱が出てきたときには、中国で特効薬として用いられるのが牛黄(ごおう)です。これは、日本薬局方にも収載されている生薬ですが、極めて希少性が高く高価ではありますが、昔から「小児の百病を治す」ともいわれ、子供に限らず高熱を伴う疾患の特効薬として日本でも平安時代には用いられていました。
インフルエンザにかかったら、何が何でも抗ウイルス剤を服用してウイルスをやっつけないと治らないと考える人が多いですが、抗ウイルス剤などよりも人間の持っている免疫力(言葉を換えれば自己治癒力)こそがウイルスをやっつけるわけで(免疫力が相当低下してしまったら、いくら抗生物質や抗ウイルス剤を服用しても効きません)、タミフルを服用しなくても漢方薬を上手に使えば、十分にインフルエンザに対応できます。