わかりやすい漢方講座(その27)~オーダーメード医療と漢方
最近、西洋医学の分野では遺伝子解析に基づくオーダーメード医療などという事が言われ始めましたが、実現するまでにはまだ相当の時間がかかると思います。
別に、個人個人の遺伝子を解析しなくても、今までも人種や性別により薬の効き方に差があるということは知られていました。医薬品のようなもので効き方に差があるということは、吸収や代謝に差があるということですが、食べ物でも、当然の事ながら人種によって差が生じると言うことです。(その代表的なものに「牛乳」が挙げられますが、成人してからでも乳糖分解酵素の活性が落ちない白人と、離乳期を過ぎた頃から乳糖を分解する酵素の活性がどんどん低下していく黄色人種とでは、牛乳という同じ「物質」を飲んでも、体の受ける影響は違ってきて当然です。)
さて、西洋医学でオーダーメード医療が注目される背景には、現在の西洋薬が、(信じられないかも知れませんが、)個体差を殆ど無視して、開発されている事が挙げられます。新薬の臨床試験というのは、あくまで有効率で表されますが、まず有効率100%という事はありません。同じ病気に同じだけの薬を投与しても、人によって効き方が違うのです(もちろん、副作用に関しても同じです)。
新薬の世界では、有効率が70%もあれば、「よく効く」薬とされますが、では、残りの30%の人はどうなるかというと、極論すれば「知ったこっちゃない」という事です。
よって、個人個人の体質に応じた薬を選択して投与できるようになるというのは、薬の有効率を限りなく100%に近づけるという夢のような良い話しなのですが、実のところ、漢方は初めから、一人一人の体質は言うに及ばず、その人の生活環境、ストレスの程度、更には季節によって処方が使い分けられるという、完全オーダーメード医療となっています。
別の見方をすると、病気の治療というと、「病名」と「患者」と「薬」に分けて考えた場合、西洋医学は「病名」が決まると自動的に「薬」が決まりますが、漢方では「患者」を徹底的に分析することで「薬」が決まります。
ですから、西洋医学的な発想ではそれが当たり前になっていますが、「何々病に効く薬」というような言い方は漢方の世界ではあまり意味を持ちません。病名だけでは、その方に適した漢方薬は決まらないと言うことです。