冷えと頻尿

わかりやすい漢方講座(その26)~冷えと頻尿

 この時期、暖かい室内から寒い屋外に出たとたん、急に尿意をおぼえることがよくあります。また、冬場になると頻尿になるという方も多いと思います。そこで、素朴な疑問ですが、なぜ冷えるとおしっこをしたくなるのでしょうか?

 西洋医学では、寒冷刺激が自律神経を介して膀胱に排尿を促すような指令が行くということのようですが、はっきりとは解明されていないようです(生理学的には感覚受容体が関与しているとかいくつかの説がありますが、いずれにせよ「なぜ、そうなる必然性があるのか」という答えにはなっていません)。

 一方、漢方的に考えると簡単な話で、体温を維持するためには「余分な水分」を抱えていることが不利になるからです。一時「水をたくさん飲めば健康になる」などというバカげた健康法が流行りましたが、体温が36℃として、水を飲めば、まず36℃まで「加熱」して、更にその水分が尿として排泄されるまでの間、ずっと「保温」しておく必要があります。

 この時「加熱」したり「保温」したりする為のエネルギーに余裕のある人は、少しくらい冷えたからといって尿意を感じることは少ないかも知れませんが、熱エネルギーの少ない人(漢方では「陽虚(ようきょ)」)ほど、寒い環境のもとでは体温を保持するために「余計なエネルギー」を使えないので、「保温」している「水分=尿」を排泄しようとする訳です。

 ですから、冷えるとすぐにおしっこに行きたくなるというのは、自分の持っている熱エネルギーが低下してきたということになり、漢方では「補腎薬」とよばれる処方などの適用になります(体質によって様々な補腎薬(処方)が使い分けられます)。

 もっとも、頻尿の原因は寒冷刺激だけではありませんが、頻尿でなくても、冷たい飲食物を控えたり、余分な水分を摂らない事が自らの熱エネルギー(本来は、健康を維持するために用いられるエネルギーです)の無駄な消耗を防ぐことになると言うことは知っておく必要があります。

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