わかりやすい漢方講座(その21)~「効く」と「治る」の違い
前々回、かぜの時には、新薬を飲んだらかえってかぜが治るのに時間がかかるという話しを書きましたが、よく質問されますので、ここのところをもう少し詳しく・・・
まず、意外に思われるかも知れませんが、薬を服用したときに、薬が「効く」という事と病気が「治る」という事は、全然別の話だと言うことです。
かぜの例で言うと、かぜをひいて頭が痛いとか発熱するとか、のどが痛いなどの症状がでますが、この時に新薬の風邪薬を飲むと、これらの症状が緩和されます。即ち、薬は効いているわけですが、客観的には、風邪薬で症状をごまかしながら自然治癒するのを待っているだけとも言えます。
これが、高血圧や糖尿病などの疾患だともう少しわかりやすいのですが、新薬の降圧剤や血糖降下剤を服用しても、確かに「薬は効く」のですが、高血圧症や糖尿病という「病気は治りません」。
それでも多くの人が、「薬で病気が治る」となんとなく思っているのは、抗生物質の出現の影響だと思います。今から60年ほど前にペニシリンが発見されて、肺炎など重篤な状態にある患者が、抗生物質の注射でみるみる回復するというイメージを、無意識に他の多くの疾患にも求めてしまうということがあると思います。ただし、抗生物質は病気を治すと言っても、細菌を殺しているだけであって、その有用性を否定するつもりは全くございませんが、感染症と生活習慣病など一般の疾患とは全く違うと言うことです。
では、漢方薬を飲めば高血圧や糖尿病などの病気が治るのかと言われれば、最終的には「その方次第」というのが正直なところです。これは、漢方の考えの根幹にあるのが、病気を治すのは、その方の自然治癒力で、漢方薬にしろ針灸治療にしろ、基本的にはその方の持っている自然治癒力を最大限発揮できる状態にするというのが最終目標だからです。(反対に言うと、病気になるということは何らかの原因で、その方の自然治癒力が低下している事が原因だということです。)