「津液とは」

わかりやすい漢方講座(その7)~「津液」とは?

 漢方では、体内に存在する正常な水分のことを「津液(しんえき)」と呼びます。細かいことを言うと、「津」は薄い水で、「液」は髄液など比較的濃い水を指しますが、実際はあまり区別されることはなく、「津液」と総称されます。また、「血」と同じく、陰陽でいえば「陰」(=物質)になります。

 さて、この「津液」ですが、飲食物の水分が胃腸で取り込まれ、これが一旦、「肺」に持ち上げられた後に、全身に運ばれ、最終的に膀胱にためられて排泄されることになっています。

 「津液」の働きとしては、お肌や毛髪に潤いを与え、涙や消化液、髄液などに変化してそれぞれの作用を発現するほか、血管の中にあっては、「津液」が「川」に、「血」が栄養物質を積んだ舟に例えられ、スムーズな血流のためにも重要な働きをしています。

 「津液」は、それが不足すると、全身に様々な症状が出てきます。即ち、お肌の乾燥や、空咳がでやすくなったり、筋肉が引きつりやすくなったり、胃もたれがしやすくなりますし、手足がほてりやすくなるほか、血流も悪くなって動悸などもしやすくなります。

 ただ、気を付けて頂きたいのは、「津液」=水分が不足しているからといって、水をがばがば飲んでも、「津液」は増えないと言うことです。

 漢方では、「津液」が不足している状態を陰虚(いんきょ)と言いますが、単純に水をたくさん飲むのではなくて、体に潤いを与える作用のある生薬や方剤で「津液」を増やしていくという方法をとります。水分の過剰摂取は、「津液」が増えないだけでなく、胃腸機能の低下を招いて、「気」のエネルギーの低下を引き起こしてしまい、「気陰両虚」と呼ばれる状態になります。

 更に、胃腸機能の低下は、水分代謝が乱れて、異常な水分の発生の原因になるとされています。この異常な水分にはいくつかの種類があって、「湿」「水飲」「痰」などと呼ばれています。

 「湿」は字の通り、余分な湿気のことですが、体内に余分な湿気が存在することで一番おこりやすい症状は、「体がだるい」という症状です。梅雨時になると、環境の湿気の影響が強くなって、体がだるくなりやすいですが、体内に余分な湿気をもっていると、環境の湿気の影響がより強く作用します。また、「湿」は「気」の流れを邪魔して、神経痛の原因ともなりやすく、アトピーなどのジュクジュクした「湿」疹とも関連性があります。

 「水飲」というのは、目に見える形の余分な水分で、腫れやむくみを伴ったり、あるいは、花粉症で鼻水があふれ出すのも、胃腸に問題がある人が「水飲」をかかえていて、花粉の刺激で、水飲が鼻からあふれだしていると捉えられます。そのほかにも、メニエール病などとも関連しています。

 「痰」は、一般には口からはき出されるものを指しますが、漢方では不要な水分が固まったものを「痰」と呼び、胃腸疾患、喘息などのほか、高脂血症、高血圧、脳梗塞などとも関連しています。イメージとしては、消化管や血管、気道などにこびりついた水あかのようなものです。

 いずれにせよ、これらの異常な水分が発生する原因としては、胃腸機能の低下によることが多く、その結果発生した異常な水分が更に胃腸の機能低下を招くという悪循環に陥りやすくなります。

 これらの異常な水分が原因となる様々な疾患については、まずそれらを除いていくことが大事ですが、根本的には胃腸の機能を正常化すると言うことが重要になってきます。(胃腸以外では、「肺」と「腎」が水分代謝に影響を与えることがあります)

 
 

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