「血」とは?

わかりやすい漢方講座(その6)~「血」とは?

 漢方で言う「血(けつ)」とは、西洋医学的な意味での血液とそんなに違うものではありませんが、漢方の考え方は、ある意味、シンプルです。

 まず、「血」はどこで作られるかというと、胃腸(漢方では「脾胃(ひい)」)の働きによって、食べ物の中に含まれる栄養物質から作られるとされています。

 この事から、血の気(け)が少ない(漢方で言う「血虚(けっきょ)」)原因としては、「食べ物の質に問題がある」「胃腸の機能に問題がある」「どこからか出血しているか」の3つしか考えられないと言うことになります。

 また、「血」は心臓によって全身に送り出されますが、「肝」によって血流量の調節を受け、なおかつ「脾」の固摂作用によって、みだりに出血しないようにコントロールされています。

 特に「血の道症」とも呼ばれる婦人疾患などでは、自律神経系と関連の深い「肝」が血流量の調節を行っていることから、ストレスと月経不順、PMS(月経前緊張症)の関連や、「脾(胃腸)」の固摂作用に関しても、胃腸虚弱と不正出血に関連性があると捉えられています。

 さて、「血」の役割は何かというと、全身の臓腑や器官に栄養を送り届けることと、滋潤作用と呼ばれますが、潤いを与えるという働きをしていると考えられています。

 この事は、例えば「血」の量の不足から、お肌が乾燥したり、腸の中に潤いがなくなり乾燥性の便秘になるほか、頭に栄養が行かなくてめまい、ふらつきの原因にもなります。また、十分な「血」がないことは、血の塊でもある「肝」の機能低下の原因になったり、大量の血液が流れている「心」に影響して不眠や動悸の原因ともなります。(西洋医学的には、血液の15%は脳に、20?25%は肝臓に送られていて、脳の精神神経機能というのは五臓六腑で言えば、「心(しん)」にあたります(心=こころ))

 ところで、漢方で血の流れが悪いことを「淤血(おけつ)」と呼び、肩こりや筋腫などの原因になるだけではなく生活習慣病との関連性も深く、「血液ドロドロ」などとも例えられたりしますが、淤血の原因は様々です。代表的な淤血の原因とタイプを挙げると、

~気虚(ききょ)タイプ・・・「気」のエネルギーが不足しているために、「血」を流す推動力が低下して、「血」の流れが悪くなるタイプ。基本的に胃腸虚弱の方に多く見られます。
~血虚(けっきょ)タイプ・・・流れるべき「血」そのものが少ないために、血流が悪いというタイプです。貧血の方などに多く見られます。
~陽虚(ようきょ)タイプ・・・冷えによって、「血」の流れが悪いというタイプです。
~気滞(きたい)タイプ・・・慢性的なストレスで、「気」の流れが滞ることで、「気」のエネルギーで流れている「血」も滞ってしまうというタイプです。
~痰湿(たんしつ)タイプ・・・コレステロールや中性脂肪の値が高く、「血」の流れが悪いという正にドロドロタイプです。
~陰虚(いんきょ)タイプ・・・血液中の水分(=「津液(しんえき)」が不足しているために、「血」の流れが悪いというタイプです。

 以上、代表的な淤血のタイプを挙げましたが、これらの原因が複数関与している場合もあります。よって、漢方では、これらの淤血を解消するために用いられる処方は、原因によって異なります。(水さえたくさん飲めば血液がサラサラになるといった単純な話しではないと言うことです)

 また、淤血=血液の流れが悪い訳ですが、最も重要なことは、毛細血管などにおける血流です。人間の体には、体重の約8%の血液があって(体重60Kgの人で、4.8リットル)、全身を巡っているわけですが、血液全体の8?9割は毛細血管に存在しています。

 要するに、血液サラサラといっても、毛細血管などの流れがサラサラにならなければ意味がないわけです。反対に言えば、動脈硬化などの問題が無くても、毛細血管における血流に問題が生じれば、淤血となるわけですが、毛細血管のような微小な血管に於ける血流改善に関しては新薬よりも漢方薬などの方が有効性が高いというのが、最近の様々な実験からも証明されてきています。

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