「湿気」の影響

わかりやすい漢方講座(45)〜「湿気」の影響

 そろそろ梅雨入りですが、漢方では体に影響する環境因子としては「風」「寒」「暑」「湿」「燥」「熱」の6種類を挙げており、この時期に問題になるのはなんと言っても「湿」です。

 また、五臓六腑の中で最も「湿」(体に害を与えるときは「湿邪」と呼びます)によって機能低下をきたすのは「脾」とされています(漢方で言う「脾」は、現代医学の脾臓のことではなくて、簡単に言えば消化管=胃腸の消化吸収機能のことです)。よって、どうしても湿気の多いこの時期は食欲も落ちてきます。

 また、「脾=胃腸の消化吸収機能」は、「寒邪」によっても機能低下を起こしやすいので、反対に言うと、湿邪と寒邪の影響を最も受けにくい秋は、「食欲の秋」と言うことになります。

 さて、これから梅雨時にかけて湿邪の影響を受けるとともに日中の気温も上昇してくるので、ついのどごしの良い冷たい食べ物や飲み物が欲しくなりますが、湿邪の影響で機能低下している胃腸に常温以下の冷たい食べ物や飲み物が入ると、胃腸の機能が更に低下して、むくみや下痢、体の重だるさなどの原因となってしまいます(冷蔵庫から出したてのものを食べたり飲んだりすることは、氷嚢で胃を冷やすようなものです)。

 昔から「脾」の弱い人のことを「ひよわ(脾弱)」というように、胃腸の機能がちゃんと働かないといくら栄養のある食べ物を食べても胃腸を素通りしていくだけになりますし、胃腸は1日に消化液が10リットル以上も分泌されているところですので、胃腸機能の低下は全身の水分代謝機能に影響し、不要な水分が体内に溜まりやすくなり(体内にある不要な湿気を「内湿」と呼びます)、これがまた胃腸の機能低下の原因となります。

 よって、梅雨時の養生法の基本としては、できるだけ冷たいものを摂らず、温かくて消化の良い食事を心がけることが最も重要となります。

 

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