(静岡グランドホテル内の四川飯店のランチメニューから)
四川飯店といえば、何年か前にはNHKの連続ドラマ(「麻婆豆腐の女房」)にもなった陳建民さんが始められたお店です(本店は赤坂にあります)。
日本で中華というと麻婆豆腐やエビチリ、回鍋肉(ほいこーろー)、棒々鶏(ばんばんじー)となりますが、これらのメニューの共通点は何かというと、総て四川料理であり、もとをたどれば四川飯店に行き着きます。反対に言うと、これらのメニューは陳さんが日本で活躍された1960年代以前には、殆ど知られていませんでした。因みに、香港は広東料理のメッカであるという点を割り引いて考えても、香港中に四川料理店は数えるほどしか有りませんし、中国国内に於いても四川省以外では、日本ほど四川料理はポピュラーではありません。
それほど、四川飯店というか陳建民さんの日本の中華料理界に与えた影響が大きかったという事ですが、その要因の一つに、食材に限りがある中で、日本人の嗜好も考慮して四川料理を日本風にアレンジした点だとも言われています。(例えば、回鍋肉には葉ニンニクの代わりにキャベツを使うとか、担々麺は本来は汁なしの麺ですが、日本のラーメン風に汁ありに改良するなど。)
こういった現地の状況に合わせるというのは、漢方の世界でも三因制宜といって、同じ病気に対しても、季節や、その土地の環境、その人の体質に合わせて処方を使い分けるべきであるという考え方にもつながるもので、例えば同じ人の花粉症でも、寒い時期の症状と、これから温かくなってきたときでは鼻水の状態や目の痒みといった症状が変化していきますので、当然、用いられるべき漢方薬の種類も変化していきます。