写真は四川料理の名菜「水煮牛肉(スイジュウニュウロウ)」をベースに、牛肉の代わりに魚を揚げたものを使っています。黄色い唐辛子を使っているため見た目はホットな感じがしませんが、かなりの辛さです。
日本でもここ最近、激辛ブームですが「辛い」という味は漢方的には「発散」させる効果があるとされていますので、ストレスが充満している社会背景を考えるとうなずける部分もあります。
因みに、漢方で「辛」というのは唐辛子以外には薄荷なども「辛」という味に分類されています。ただ性質として唐辛子は「熱」で、薄荷は「涼」です。口中清涼剤の多くに薄荷などのミント類が使われるのも、漢方的に考えると「辛」味で「気」の流れを良くしているわけです。
唐辛子の薬膳的な効用としては、「温中散寒」「開胃解欝」となっており、胃を温めて食欲を増進させる効果がありますが、刺激が強いので摂りすぎると胃を痛めます。
唐辛子を使った料理は冬の寒い時期に体を暖めてくれますが、実は梅雨時などの湿気の多い時期にも適しています。これは、湿気というものが「気」の流れを邪魔する性質があるため梅雨時に体がだるくなるわけですが、「辛」いという味は発散効果で気の流れを良くしてくれるだけでなく、発汗作用もあって結果的に暑い時期には体温を低下させる事にもなります。
四川省は盆地で夏場などは特に湿度、温度ともに高く、冬は冬で寒いという事から唐辛子などを使った辛い料理を好むといえます。もっとも、四川料理の特徴は唐辛子の「辛」さプラス山椒のしびれるような「麻」の味の強力なコンビネーションで、純粋に辛さだけでいえば中国八大料理の一つに数えられる湖南料理の方が絶対に辛いです。(湖南省に行った時に現地の人に聞きましたが、子供が物心ついた頃から毎日のように、子供が泣かなくなるまで唐辛子を無理矢理口の中に入れて慣れさせるそうですので半端ではないです。)