鱧の子を使った魚子豆腐(ユィズドウフ)です。基本的には魚卵と豆腐をスープで煮込んだ料理で、シンプルながら魚卵の風味が淡泊な豆腐と合います。
ところで、魚卵にかぎらず卵とは薬膳的には生命エネルギーの塊と考えられ、鱧のような生命力の強い魚の卵は特に気のエネルギーを補う作用が期待できます。
現代栄養学ではカロリーや栄養成分を分析するだけですが、東洋医学的には野菜であっても生長点に近いところの方が生命エネルギーが豊富に含まれていると考えます。特にニワトリの卵などでは有精卵と一般的な無精卵では栄養成分に差がなくても、字の通り有精卵には精という物質が含まれていることから、より有用なものと捉えられます。
こういった考え方は、食べ物を食べることは命をいただくことという考え方が当たり前だった半世紀前までは皆が知っていたように思いますが、昨今は食料品がコモディティ化というか単なる流通産物や商業製品となっていく中でこのような発想が廃れてきているように思います。
食料品がコモディティ化していくことは栄養学や薬膳だといった問題ではなく、人間までもがコモディティ化しそうで恐ろしいような気がします。