スープ春雨の上に鱈の白子の湯引きが載せられ、白腐乳ソースがかけられています。
言うまでもなく、白子は精巣ですが、有精卵や精力といった言葉にも使われる“精”とは、元々、生命の根源物質のようなものとされ、生命の誕生は新たな精が生じることから始まると2000年ほど前の書物にも記されています。
漢方の理論では、精とは、からだを形作る基礎物質であり、同時に生命の火ともいえる腎陽の燃料でもあり、両親から受け継いだ先天の精と、生まれてから後は食べ物の中から最も栄養の濃い部分を後天の精として補充していくことで、生命活動が円滑に営まれるとされています。精という物質から見ると、人間の老化とは精の減少過程でもあり、長生きするためには精という物質を保持していくことが重要とされています。
また、一年では冬の季節は精を蓄えておくべき季節とされ、その為には精を多く含んだものを食べると良いとされています。精を多く含むといっても、白子などにだけ精が含まれているわけではなく、中華の食材で言えば魚の浮き袋やフカヒレ、ナマコといったものやエビなどのほか、山芋などですが、基本的に生命力の強い食材ほど精を多く含んでいるので、ハウス栽培されたものよりも地植えの野菜、養殖された魚より天然物ということになります。こうした感性は東洋だけでなく、フランス料理のジビエなども同じ発想だと思います。
ただし、生命力の強い食材は基本的に旺盛な消化力を要求されますので、胃腸の弱い人は、まず胃腸の機能を整えることが先決問題となります。無理に栄養の濃い食材を食べても、胃もたれするだけで、精という物質をからだに取り込むことが出来ないからです。