今日は、七十二候のひとつ半夏生です。
半夏(はんげ)とは、植物名はカラスビシャクと言い、田んぼのあぜ道などに生える雑草のようなものですが、その塊茎を乾燥させたものが生薬の半夏です。
生薬の半夏は、簡単に言えば胃腸にたまった“水垢”のようなものを取り除く作用があり、結果的に胃のむかつきや吐き気、食後の膨満感などに効果があります。
胃腸の“水垢”が発生する要因は、胃腸の機能低下から水分代謝機能が乱れて不要な“水垢”(漢方用語で“痰湿”と言います)がたまるとされています。胃腸の水分代謝といってもピンと来ない方も多いかも知れませんが、胃腸は飲食物に含まれる水分以外に、唾液や胃液、胆汁などの消化液が1日に10リットルも分泌されるところで、胃腸機能の低下は全身の水分代謝に大きく影響します。
また、一般的に言う“痰”も、漢方理論では胃腸の水分代謝異常から発生するとされ、発生した“痰”は肺にためられ、それを排泄しようとして咳が出るとされています。このため、“痰”を伴う咳を鎮める処方には半夏が配合されます。
実際に半夏が生えてくる半夏生の時期は湿度が高く、湿気は五臓六腑の脾、即ち胃腸の機能に悪影響を与えることから、普段から胃腸の弱い人だけでなく日頃は元気な方でも胃腸の調子を崩しやすくなります。よって、夏至から数えて11日目を半夏生と名付けた先人は、半夏の薬効を承知していたはずです。
さて、関西では半夏生にはタコを食べる習わしがあり、これは田植えがすんで、稲の根がタコの足のように土の中に広がっていくことを願ってと言われていますが、高タンパク質のタコは夏バテ予防にもなりますし、からだの余分な熱を冷ます作用もありますので、この時期にはお勧めの食材です。