火腿蚕豆飯

201105 さやの形が蚕に似ていることから蚕豆と呼ばれる‘そら豆’は日本でもお馴染みですが、中国の方が圧倒的に生産量も多く、日本以上にポピュラーな食材です(因みに、そら豆は、莢が空に向かって伸びるので空豆)。

 特に、立夏には蚕豆を食べる習慣が古くからあり、蚕豆を入れた炊き込みご飯もよく食べられています。蚕豆の色が翡翠の色にも例えられ、白いご飯とのコントラストも美しいです(写真の炊き込みご飯は、蚕豆のほかに金華ハムと鶏肉が載ったデラックス版です)。

 蚕豆の薬膳的な効能は利湿健脾で、胃腸の働きを良くして不要な水分を除く(薬理的には胃腸の機能向上→胃腸の水分代謝の改善→からだに余分な湿気や水分がたまらない)ということで、梅雨時にはお勧めの食材です。

 また、これからの日本では、食品中の放射性物質の影響をいかに防ぐかというのが大きな課題になりますが、体内に取り込んでしまった放射性物質は、放射線そのものと放射線が体内を通過する時に発生する活性酸素が、細胞や遺伝子を傷つけることが問題となります。

 よって、活性酸素を消し去るSOD様作用のあるものを摂取することと共に、傷ついてしまった細胞を取り除く能力(=免疫力)を高めることが重要となります。免疫力については、胃腸機能が大きな鍵を握っており(腸管免疫)、胃腸の状態が悪化することは免疫力の低下に直結します。つまり、放射性物質の影響をより多く受けてしまうと言っても過言ではありません。

 近年、食品添加物や食生活の乱れが指摘されていますが、漢方的な観点から最も問題なのは、食べ物そのものの栄養価ではなく、食品中に含まれる化学物質や食の乱れが、胃腸の機能低下の大きな要因となっていることです。

 漢方の大原則の一つに「脾は後天の本」というのがあって、これは、人間が生きていく上で胃腸機能が最も重要ですという意味です。現代医学的にも、胃腸が飲食物の消化吸収代謝をコントロールしていること、腸管免疫は人体の免疫力に大きく影響していること、胃から成長ホルモンの分泌を強力に促すグレリンというホルモンが分泌されていることが発見されたことなど十分な裏づけがあることです。

 ところが、胃腸の検査といえば、粘膜の異常を調べるだけで、粘膜が正常であれば胃腸に問題なしと安易に片づけられてしまい、胃腸の機能に関して考えが及ばないのが現実で、それゆえ飲食物についても栄養素の集合体として捉え、食べ物が胃腸機能にどのように影響するかという発想が失われているところに大きな問題があるように思います。

 

 

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