吉田俊道さんのニンジンを、冬菜(ドンツァイ:中国四大漬け物のひとつで特に天津のものが有名)と共に蒸したシンプルな料理です。
無農薬と言うだけでなく、有用な微生物だらけの土の中で、微生物が作り出す代謝産物を栄養として成長したニンジンには、ビタミンなどのほか、ファイトケミカルとよばれる健康成分がたっぷり含まれています(特に植物自身の身を守るために外界と接している皮の部分や生長点である芽がでる頭の部分にはそういった有用成分が豊富に含まれていますが、現代では調理の過程で皮をむき、頭の部分も捨ててしまうのが当たり前のようになっているのはモッタイナイ限りです)。
薬膳というか、漢方の考え方では人間は食べ物から栄養物質と共に“気”のパワーも吸収することになっていますが、このニンジンを食べてみると、その意味が良く理解できます。反対に言うと、微生物も棲息しない力のない土の中で化学肥料と農薬の力をかりて栽培されたニンジンには、ビタミンなどの栄養素も少なければ、ファイトケミカル(漢方でいう“気”のエネルギーのもと)も殆ど含まれていないだけでなく、味も本来の味からは遠いものになっています。
しかしながら、化学肥料や農薬とともに、調味技術というか食品添加物の飛躍的な進歩?は、それらを使いさえすれば、化学的に味も香りもどのようにでもすることが可能となっている現実があります。ただし、味はごまかせてもファイトケミカルというか“気”のエネルギーの補充に関してはごまかしようが無く、結果的に現代日本人の特性として、漢方的に見て“気”のパワーが不足した“気虚”の人が増えています。
その最たるものが花粉症(漢方的に見た場合は“衛気”とよばれる体表部や粘膜を外界の刺激から守っているバリアのパワー低下が原因)の蔓延で、野菜不足をビタミン剤で補えば済むという訳にはいかなくなっています。
※野菜は無農薬であれば良いというわけでなく、無農薬でも元気に育つ土壌で育てられた野菜にこそ値打ちがあります。最近は、工場で無農薬で水耕栽培されたような野菜も売られていますが、単に農薬を使用していないと言うだけで、人体に有用な栄養が十分含まれているかというと、殆ど含まれていないと思います。