牛タンは言うまでもなく、牛の舌で、基本的には低脂肪で筋肉質ゆえ、シチューなどの煮込み料理に使われますが、和牛などは脂肪分があって焼き肉でも人気の部位となっています。
ところで、漢方では昔から舌の状態を観察して体内の状態を推しはかる方法が確立されており、舌診と呼ばれています。
舌の色や苔の状態、舌裏の静脈の浮き具合などがポイントになりますが、一般の方でも舌の表面についた白い(人によっては黄色みを帯びることもあります)苔は、口臭の原因になるとかで気にされている方は多いと思います。
また、最近では舌の苔がぶ厚い=口中の細菌が多い=インフルエンザウイルスが活性化されるだけでなく、様々な疾患の原因となる事がわかっており、タンクリーナーや歯ブラシで苔を取っている方も多いと聞きます。ただし、歯ブラシなどでこすると、味蕾など舌の表面が傷つけられる恐れがあるので、歯ブラシにガーゼを捲いてやさしくとるべきとされています。
漢方の舌診上は、舌の表面の苔は万遍なくうっすらとついているのが正常とされており、苔がぶ厚くついているのは基本的には水分代謝の異常(胃腸の水分代謝能力の低下、もしくは水分の摂りすぎ)と考えられており、食生活や胃腸機能を整えるなど体質改善をしない限り、苔を取っても、すぐにぶ厚くなり、根本的な改善にはなりません。
胃腸の水分代謝というとピンと来ない方も多いのですが、胃腸には、毎日、飲食物に含まれる約2リットルの水分のほかに唾液(1日に1.5リットル分泌されます)や胆汁、膵液、胃酸や胃腸の粘液などが約10リットル、合計で12リットルもの水分が流れており、これらの水分の代謝に密接に関わっています。その機能低下はむくみや下痢、おりものなどの増加だけでなく、舌の上の苔がぶ厚くなる大きな要因とされています。
更に、漢方では「脾(=胃腸)は後天の本」と言って、胃腸機能がしっかりしていないと気力低下や免疫力の低下、低体温や全身機能の衰えの原因となるとされており、胃腸の機能が正常かどうかは健康上、極めて重要な問題になります。
また、胃腸の機能の低下はレントゲンや胃カメラには写りませんので、健康診断で異常がないといわれても、それは器質的な問題がないというだけであり、その機能が正常かどうかはわかりません。では、どうすればわかるかというと、簡単な話で、「毎食、健康的な空腹感がある」「食後に眠たくなったり、もたれたりしない」「便通が正常」という3つが揃えば、胃腸機能は正常と判断されますし、3つのうち2つがNOであれば、即、胃腸機能に問題があることになります。
ただし、舌の苔との関係では、胃腸機能の低下=舌の上の苔がぶ厚いとはなりませんが、舌の上がぶ厚ければ、短期的な問題か体質的な問題かは別にして、ほぼ間違いなく胃腸の機能低下が疑われます。
西洋医学的な病名としては、機能性胃腸障害となり、漢方薬が最も得意とする分野ではありますが、そもそも機能低下の原因が食生活の乱れであることが多く、正しい食生活を心がけることが大事ということになります。(→「日本人のための食養生」)