(引き続き、東京、過門香さんのメニューから)
日本人の好きな中華メニューの中でエビチリははずせないと思います。
ケチャップを使ったり結構、西洋的な感じもしますが、もともとミソの部分が濃厚な大正海老を使った乾焼明蝦という山東料理がオリジナルで、本来はケチャップではなくエビミソの色と唐辛子で赤い色を出していました。また、四川料理系では豆板醤が使われますが、このメニューが日本でこれだけ広まったのは、かの陳建民さんが日本人の口に合うように今のような形にアレンジしてからだそうです。
中国には“衆口難調”という言葉があり、直訳すれば誰の口にも合う料理は作れないという意味で、地方によって好まれる味覚に大きな差がある国ならではの言い回しですが、同質性を善とする日本では口に出しにくい言葉でもあります。
漢方の世界でも三因制宜と言いますが、同じ病気でも季節によって、あるいは住んでいる土地の環境によって、更にその人によって用いられる薬や治療方法が異なるのが当たり前とされています。ところが、日本人の発想では病名が同じなら使う薬も同じで良いと安易に考える人が多く、これは一つには新薬が病名投与を基本とすることの影響も考えられますが、根本的には同質性社会を前提とした発想ではないかとも感じます。