この写真を見れば日本人なら間違いなく麻婆茄子と答えると思いますが、日本で麻婆茄子と呼ばれているメニューに似て非なるものです。というか、そもそも中国に麻婆茄子なるメニューは存在しません(天津飯などと同じく日本で開発されたメニューです)。
日本で人気のある麻婆豆腐の豆腐を茄子に置き換えたのが麻婆茄子だと思いますが、写真の料理(魚香茄子:ユィシァンチエズ)は酢(本格的には料理名の由来となっているフナの香りを移した酢)と砂糖、唐辛子、にんにくなどで味付けされたものです(歴史も麻婆豆腐よりは古いと思います)。
ま、どうでもいいことではありますが、先日、某有名なビストロというか創作料理のお店で、「自家製の麻婆茄子です」といって料理を出された時に、「自家製って・・・」と思わず口から出てしまいました。「クックドゥーを使ってないって言いたいわけですか?」という言葉は飲み込みましたが、日本に於いて麻婆茄子=中華料理=クックドゥーという図式が“常識”の域まで達していることを痛感させられました。
さて、茄子紺とも呼ばれる目にも鮮やかな色が特徴のナスは、インド原産の夏野菜の代表で、からだにこもった余分な熱を冷ます清熱作用に優れた食材です。これから気温も上昇していきますが、薬膳的には、暑いから冷たいものを摂ってからだを冷やすという発想はなく、あくまで熱を冷ます作用のある食材を(もちろん温野菜というか加熱調理して)摂ることで体内の余分な熱を冷ますのが大原則です。