七草がゆならぬ七草入りの羮(あつもの)です。聖護院大根を米粒よりは大きめに細かく刻んで七草とともに羮(あつもの)仕立てにしてあります。もっとも、歴史的にみた場合は七種類の野菜の羮がオリジナルで、時代とともに粥に七草を入れるようになったとされています。
ところで、意外と知られていませんが七草がゆを食べる1月7日という日は五節句の一つの「人日」であり、本来は人間界の一年を占う日でした。
この日に七草がゆを食べるのは、正月のご馳走で負担のかかった胃を休めるためともいわれますが、実際に七草には健胃作用のあるものが多く、1年のはじめに胃腸を丈夫にしようという願いをくみ取ることができます。
漢方では「脾は後天の本」という言葉があって、人間が長生きするためには脾=胃腸が丈夫でなければならないという大前提があります。日本語でも「ひよわ」という言葉がありますが、五臓六腑の「脾(=胃腸)」が「弱い」人は、即ち「ひよわ」ということです。脾とは現代医学の脾臓ではなく、現代医学でいう胃腸のことですが、西洋でもガッツ=「はらわた」で、ガッツのある人=胃腸の丈夫な人という考え方があるわけで、こういった概念は人類共通のものです。
因みに、その重要な「脾」という字は肉月に「卑しい」と書きますが、これは中国の道教の思想で、卑しいものが実は最も貴いという逆説的な意味が込められているとされています。