毎年、11月22日と23日は薬の町として知られる大阪、道修町(どしょうまち)の少彦名神社のお祭り~神農さんです。
お守りの張り子の虎が有名ですが、別に阪神タイガースに因んだわけではなく、文政5年(1822年)に大坂で疫病(コレラ)が流行した時に虎の頭の骨を配合した丸薬を作り、神前で祈祷して庶民に無料配布したことに因んでいるそうです。
虎の骨というといかにも効きそうな感じがしないでもないですが、現代人の感覚からは怪しさの方が先に立つと思います。
ところが、実は虎の骨はれっきとした生薬として、つい最近まで使用されてきました。現在は、動物保護の絡みで取引が禁止されていますが、20年ほど前までは、日本にも虎の骨の入った製剤が中国から輸入され、販売されていました。
もっとも、虎の骨の効能としてはコレラなどの疫病や高熱を下げるといったものではなく、主に神経痛に有効とされ、内服薬のほか中国などでは湿布剤(麝香虎骨膏など)にも配合されていました。
江戸時代にコレラに使われたのは「虎頭殺鬼雄黄圓」という処方で、虎の骨以外にも何種類かの生薬が入っていたわけですが、虎の骨には「安神定驚」作用もあるとされていますので、コレラに対する庶民の過剰な恐怖心を抑える意味があったのかも知れません。