漢方から見たイライラ

ストレスの充満する社会にあっては、イライラすることが多くなるのは事実ですが、イライラの原因がストレスであるといっても、その方の体質によって、用いられる漢方薬は違ってきます。

漢方ではストレスを七情と言って、「怒」「喜」「思」「憂」「悲」「驚」「恐」の7つに分類していますが、イライラの原因は7つの中の「怒」であり、漢方ではイライラしやすい事(病態)を「善怒(ぜんど)」とも言います。

「怒」という漢字は、現代の言葉では「怒(いか)る」という意味に使われますが、この字の本来の意味は「奴(=奴隷)」の「心」を表し、周りからあれやこれやと言われ、自分の思い通りにならなくてイライラするという感情を表しています。また、この「怒」というタイプのストレスは、「気」の流れの停滞(気滞(きたい))を発生させるとともに五臓の中の「肝」に影響しますので、イライラするといった精神状態以外にも「肝」の働きの失調からくる様々な症状を伴います。例えば、目の充血(目やに)、筋肉痛や筋肉の凝り、高音性の耳鳴り、手先足先の冷え(末端の冷え)などですが、胃腸症状ではゲップやガスが出やすい、便がすっきり出ないなどの症状が見られやすくなります。特に女性の場合は生理前になると胸や脇が張る、月経周期が一定しない、生理痛、肌荒れなどとも関連しています。

イライラを取り除くためには、その方の「肝」のコンディションを整える事が重要になってきます(漢方で言う「肝」に問題があるからといって、必ずしも西洋医学的に肝臓病であるというわけではありません)が、「肝」のコンディションが整うことによって、イライラだけでなく、同時に「肝」に関連した様々な症状も解消していきます。

次に、「怒」というタイプのストレスが影響したときに、その方の体質的な特徴との関係で、症状も用いられる漢方薬も異なってきますが、以下にいくつかの典型的なパターンを挙げておきます。

ため息タイプ

イライラするほかに、胸や脇腹が張る、ためいきや体のだるさ、憂うつ感が強いなどの症状を伴う。

怒りタイプ

イライラして怒りっぽい、口が渇く、口の中が苦い、胸や脇が張って苦しいなどの症状を伴うタイプ

お腹にくるタイプ

気力低下や食欲不振、軟便、下痢しやすい、お腹の張りや腹痛、ガスなど胃腸症状を伴うタイプ

のぼせタイプ

怒りっぽくなるほか、目の充血、寝汗や手足のほてり、尿が濃くなる、膝や腰のだるさなどを伴うタイプ

ワンポイントアドバイス

ストレスにさらされると、その初期段階からまず見られるのが睡眠障害です。睡眠障害といっても殆どの場合、「よく夢を見る」とか「夜中にはっと目が醒める」という程度のことで、たいしたことではないと思いがちですが、深い眠り(ノンレム睡眠)の割合が少なくなり、成長ホルモンの分泌やGABAの合成が低下することで、肉体的にも精神的にも疲れやすくなっていきます(→「漢方薬とストレス・睡眠障害」参照)が、このイライラというかストレスの初期段階では、ぐっすり眠れるようになるだけでも体は楽になってきます。

また、イライラした状態が続くと、どうしても唐辛子などの辛いものを欲しくなります(辛いという味は「気」を発散させる作用があります)が、摂りすぎは胃を痛めますので、唐辛子などよりは、胃に負担がかからない香味野菜やミント類を積極的に摂ることをおすすめ致します。

更に、漢方理論では、「感情的に涙を流す」という事で「怒」というタイプのストレスによるイライラは軽減されますので、感動ものの映画などを見て積極的に涙を流すというのも効果的です(タマネギなどの刺激物による涙は効果がありません)し、このタイプのストレスにさいなまれている方は、自己防衛反応として「涙もろく」なる傾向が見られます。

おすすめの漢方薬

・加味逍遙散(かみしょうようさん)
・冠脈通塞丸(かんみゃくつうそくがん)
・救心感応丸気(きゅうしんかんのうがんき)
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
・イスクラ逍遙丸(しょうようがん)
・能活精(のうかっせい)
・竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)など

 など

1ヶ月分のご予算

8,000円~15,000円

「疾患・症状と漢方薬」に関するFAQ

Q:西洋医学的な病名にあった漢方薬を服用してますが効きません。


A:漢方薬の効能は西洋医学的な言葉で書かれていますので、病名が合致しててもその漢方処方が本来使用されるべき体質でなければ効果がないばかりか副作用のリスクも増大します。


Q:漢方薬と西洋薬の併用に問題はないですか?


A:漢方薬と西洋薬との相互作用についても注意する必要があります。ご相談の際には服用中の西洋薬やサプリメントをお教え下さい。