いのち輝く元気野菜のひみつ

Photo  NPO法人「大地といのちの会」理事長の吉田俊道さんの本です。

 先日、当のご本人の講演を聴く機会がありましたが、柔和なお人柄ですが、内面はすごくパワフルな方でした。

 九州大学農学部の大学院を修了後、長崎県で農業指導員をされていましたが、30代半ばで自らの信念を実現するために周囲の大反対を押し切って有機農業に参入された方で、最初は無農薬の野菜に押し寄せる虫の被害に悩まされ続けたそうです。

 ところが、ある日、畑の中でそこだけ虫が寄りつかない場所を発見、そこに生えていたブロッコリーを口に含むと、虫が押し寄せてくる場所に生えているものとは比べものにならないほど甘かったそうです。

 そして、虫たちが押し寄せてくるところは、未熟な堆肥を入れたところだったことを思い出し、強くておいしい野菜の秘密は土にあることに気付きます。元気な野菜に必要なのは農薬や化学肥料ではなくて、微生物が豊富に棲む土から野菜へ伝わる“生命力”であり、その土のパワーを引き出すことができれば、誰にでも無農薬、化学肥料無しでも元気な野菜がとれることを発見されました。

 その後は、野菜の皮や芯といった栄養成分が豊富で生長点を含む部位の宝庫とも言える生ゴミを使った土づくりを広めたり、日本で昔から言い伝えられている食養生の知識をまとめた「大自然の生命力とつながる食生活17項目」を提唱し食育活動にも力を入れ、農業の合間を縫って全国各地で講演活動をされています。

 また、吉田さんの話は人間の健康にもおきかえられ、人間が元気でいるためには土の中から生命力をいっぱい取り込んだ元気野菜をたべることで、健康な体ができる、元気のない作物に虫がよってくるように、ウイルスも元気な野菜などを食べていない人間にとりつくとか、腸内細菌バランスが良くないと食べものの栄養を十分取り込むことができないといった話しにもつながるほか、「大自然の生命力とつながる食生活17項目」を実践した小学校などでは1ヶ月ほどで低体温が改善したり、おなかの調子がよくなったり、かぜを引きにくくなったといった変化が見られるだけでなく、日頃の生活態度や学力の向上にもつながったという例なども挙げておられました。

 吉田さんの話は、人間は大自然の中の一部であり、人間は食べものから栄養だけでなく、「気」=生命のパワーも取り入れているといった漢方の考え方そのものであり、吉田さんの自然と人間に対する慧眼には驚かされました。

(吉田俊道 著、「いのち輝く元気野菜のひみつ」2010年改訂版、定価525円)

 

 

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