題名だけ見るとトンデモ本のようにも見えますが、著者は現役の東海大学医学部の教授です。
本のカバーには「本書では、コレステロール、中性脂肪を中心としたメタボ健診の実情とそれに伴う薬の処方の問題点、国際基準からみた正しい規準を数多くの図表とデータをもとに明らかにし、自らの体の守り方、気のつけ方のポイントをわかりやすくまとめています。」とあります。
また、本書の目次をピックアップしてみると、多くの矛盾点が指摘されながらはじまったメタボ健診については「健康な人を病人にする罠である」と指摘、更には「総コレステロールは高い方が長生き」し、「低コレステロールは死亡率が上がる」ことや「女性にコレステロール低下薬が処方されているのは日本だけ」といった事について具体的なデータを元に解説しています。
もちろん、心疾患などの既往歴のある方や、遺伝的に中性脂肪が高くなってしまうような場合には薬を処方することまで否定しているわけではありませんが、欧米に比べて日本ではコレステロールや中性脂肪を下げる薬があまりにも安易に処方されており、薬の副作用面だけでなく、不必要にこれらの数値を下げることが結果的に健康面でマイナスになることを一般の人にもわかりやすく述べておられます。
(詳伝社新書(131) 2008年11月初版)
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日本人は薬好きといわれますが、その原因を考えてみると、国民皆保険であること、医療機関に於けるカウンセリングなどに対するフィーが殆どなく検査と薬を処方することが医療行為であるかのように思われていることなどで、結果的に「病気は薬がなければ治らない」という思いこみが強すぎると思います。
もちろん薬を飲むことで早く良くなる病気はいっぱいありますが、中には本書で指摘されているように飲まない方がずっと良いというケースもいっぱいあることは事実だと思います。更には、あまりにも薬に頼りすぎて「養生」や人間の「自己治癒力」といったものを軽視しすぎる傾向は年々強くなっているように思われます。
ところで“コレステロール値が高いと血液がドロドロになってコレステロールなどが血管壁に付着しやすくなって動脈硬化や心筋梗塞の原因になる”と思っている人は多いと思いますが、2002年に発表された論文では、実際は活性酸素などによって生じた血管の炎症による“傷”を修復するために細胞膜の原料であるコレステロールが集まってくるそうで「コレステロールが高くても、血管に炎症がなければ心筋梗塞や脳卒中にならない」というのは知らない人が多いのではないでしょうか?