本の帯にあった推薦文には「不思議に満ちた一連のストーリーと健康科学の系統性を兼ね備えたコミック教材・・・それは、健康教育で“夢”とさえ思われてきたテーマでした。歯科教材の鬼才・オカドンが世界を旅して集めた“珠玉のお話ワンダーランド”が、子どもたちの知的好奇心をゆさぶり、未来への健康観を育てます。ー(大分大学教授・住田実)」とあるように、本書は全16話からなる“食育”に焦点を当てた歯の話しです。
歯の健康に関して甘い物は控えるとか、歯磨きが大切といったようなありきたりの話しではなくて、恐竜や馬や牛、猫や犬の歯並びや歯の形状からそれぞれに適した食性があるという話しや、噛むことは重要だが、子どもにいきなり固い食材を食べさせるのではなく、食事の具材を大きめに切って、何度も噛まないと食べられないように工夫する方が良いとか、子どもも親も納得の話しが満載です。
著者のオカドンこと岡崎好秀先生は岡山大学の医学部・歯学部附属病院 小児歯科講師で障がい児歯科や健康教育に力を入れ、講演で全国を飛び回って居られます。ご本人の弁によると、自分の学生時代を考えたら、役に立つ授業よりも自分がおもしろいと思える授業こそが一番であるとの思いから、歯科の健康教育についても「おもしろいと思ってもらって」「理解してもらえる」にはどうすべきかをいつも考えておられるそうです。
本書は正にそういった著者の思いをもとに、小児歯科という臨床経験のなかで培ってこられたノウハウが、子どもから大人までおもしろく読めるコミックの形で結実したものと言えます。
(著 岡崎好秀、マンガ 勝西則行、東山書房、2008年10月初版)
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本書は「歯科医師から見た食育ワンダーランド」という副題がついていますが、一般の人は“食育”と聞くと何を食べたらいいのかといった事ばかりに注目しがちですが、本当の食育とは「食品(食材)」だけでなく「調理」や本書に書かれているような「歯や咀嚼」、更には食べものを消化吸収し排泄する胃腸の機能なども含めたところまで考えなければいけないと思います。また、形には見えないものの親子や家族の間で食を通じて伝わる大事なものがあることも見逃せません。
また、よくよく考えると、「食」に関して現在問題になっている事は、一昔前の人にとっては常識とされていたことがことごとく忘れ去られていることが原因であるような気もします。つまり、おなかを冷やしてはいけないとかよくかんで食べないといけないとかですが、このまま10年も経てば、そういった事を聞いたことがあるとか子どもの頃に親から言われていたという記憶のある人もいなくなり、恐ろしい世の中になるような気がします。